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コラム


2025年09月12日

防災トイレの自治体事例から学ぶ本当に有効な災害対策とは?

施設の防災担当者として、災害時のトイレ対策に頭を悩ませていませんか?
水や食料の備蓄は進んでも、トイレ問題は複雑で後回しにされがちです。
しかし、過去の震災では不衛生なトイレが原因で、避難者の健康が脅かされる事態が繰り返されてきました。

本記事では、一般的な災害用トイレの限界を、自治体の事例と課題を根本から解決する選択肢を解説します。
持続可能な防災トイレ対策の参考にしてください。

災害時に本当に問題となるのは「トイレ」

災害への備えと聞くと、多くの方は水や食料の備蓄を思い浮かべるかもしれません。
しかし、過去の震災では、避難者の命と健康を脅かす最大の課題は「トイレ」でした。
トイレ問題は単なる不便さでは終わらず、時には命に関わる事態を引き起こすため、防災対策の中でも優先的に考える必要があります。

ここでは、トイレ問題の深刻さを示す3つの事実を解説します。

  • 避難所で問題になった設備のトップはトイレ
  • トイレ我慢が招く「災害関連死」という負の連鎖
  • 水や食料よりも早く必要になるという事実

なぜトイレ対策が最優先であるかが理解できるでしょう。

参考資料:考えよう!災害時のトイレ – 滋賀県

避難所で問題になった設備のトップはトイレ

過去の災害における調査で、避難生活で問題となった設備のトップは「トイレ」でした。
実に74.7%もの人が、トイレにもっとも困ったと回答しています。

たとえば1995年の阪神・淡路大震災では、劣悪なトイレ環境から「トイレパニック」という言葉が生まれています。
2011年の東日本大震災でも、トイレは避難所で一番問題になった設備としてあげられました。
これらの事実から、トイレ問題は災害時に必ず発生する深刻な課題だと分かります。

トイレ我慢が招く「災害関連死」という負の連鎖

不衛生なトイレやプライバシーの欠如は、多くの人にトイレを我慢させます。
その結果、水分や食事の摂取を控えますが、この行動が健康状態を悪化させる引き金となるのです。

水分不足は、血栓ができて血管が詰まる「エコノミークラス症候群」などを誘発。
また、避難所のストレスと相まって免疫力が低下し、持病の悪化や感染症にもかかりやすくなります
このような、避難生活が原因で命を落とす「災害関連死」の背景には、トイレ問題が大きく関わっています。

水や食料よりも早く必要になるという事実

災害への備えは水や食料が第一に考えられがちです。
しかし、人間が生理的に我慢できないのがトイレという現実があります。
熊本地震では3時間以内が約4割、6時間以内で約8割、東日本大震災では3時間以内が約3割、6時間以内を含めると7割弱がトイレに行きたくなりました。
水や食料は、たとえ1日や2日なくても、すぐ命に関わることは少ないかもしれません。

一方で、排泄は数時間単位で発生する生理現象です。
この事実からも、トイレは水や食料よりも早く必要になるものだと考えられます。

自治体が取り組む一般的な災害用トイレと現場が直面する「限界」

多くの自治体では、災害のフェーズに応じて複数の災害用トイレを組み合わせる対策を進めています。
しかし、それぞれのトイレにはメリットと共に、運用面での課題や限界も存在します。

ここでは、代表的な3種類の災害用トイレとその課題を紹介します。

  • 携帯トイレ・簡易トイレの役割と課題
  • 仮設トイレの利便性と衛生面の課題
  • マンホールトイレの利点と弱点

対策を計画するうえで、各トイレの特性を正しく理解し、その限界を認識しておきましょう。

携帯トイレ・簡易トイレの役割と課題

携帯トイレや簡易トイレは、発災直後の対策として重要な役割を担います。

携帯トイレは、断水時でも自宅や避難所の洋式便器に取り付けてすぐに使えるのが利点です。
しかし、長期的な使用には限界があります。
使用するたびにゴミが出るため、1人あたり5日から7日分を備蓄するとかなりの量になります。
また、備蓄した携帯トイレは洋式便器で使うことが前提です。

避難所のトイレが和式ばかりの場合、そのままでは使えません。
その際は、和式便器の上に乗せて洋式として使えるようにしたり、トイレのない場所に設置したりできる「簡易トイレ」が役立ちます。

仮設トイレの利便性と衛生面の課題

仮設トイレは、多くの人が利用できるため避難所運営に不可欠な設備です。
しかし、その利用には多くの課題が伴います。

まず、災害発生から避難所に届くまでには時間がかかります。
東日本大震災で仮設トイレが不自由なく使えるまでに、3日以内は34%、4日から7日が17%、8日から14日が28%でした。さらに1ヶ月以上かかった場合もありました。

多くが和式で使いにくいうえに、汲み取りをしないと利用を継続できません。
多数の人が使うことで内部が汚れやすく、衛生環境が悪化しやすい点も大きな課題だといえるでしょう。

マンホールトイレの利点と弱点

マンホールトイレは、下水道に直結するため衛生的で、し尿ゴミが出ないという大きな利点を持っています。
国土交通省の調査によると、全国で約4万6,000基が設置済みです。
しかし、その利用にはいくつかの条件があります。

まず、災害時に使えるように、あらかじめ専用の工事が必要です。
また、下水道管路自体が被災した場合は使えません。
利用者のプライバシーや臭いの問題、発災時にテントをスムーズに設営するための訓練が欠かせないといった課題も指摘されています。

参考資料:国土交通省「都道府県・政令市別 マンホールトイレ管理基数(令和5年度末)」

既存の課題を解決する第4の選択肢「循環型・独立式トイレシステム」

災害用トイレの課題を解決する選択肢として、循環型・独立式のトイレシステムがおすすめです。
衛生や快適性、運用負荷といった課題を解決し、災害時で「いつもどおり」に近いトイレ環境を維持できる可能性を秘めています。

ここでは、循環型・独立式システムがもたらす3つの価値を紹介します。

  • 災害時でもいつもどおりの「水洗トイレ」が使える安心感
  • 汲み取り不要で衛生的な空間を維持
  • 利用者のプライバシーと不安を解消

詳しく見ていきましょう。

災害時でもいつもどおりの「水洗トイレ」が使える安心感

循環型・独立式トイレシステムの最大の利点は、災害時でも普段と同じ水洗トイレを継続して使えることです。
断水・停電時でも非常用電源(例:発電機)に切り替えることで、水洗利用を継続できます。
切り替え方式(自動または手動)は仕様により異なります。
利用者が災害発生時に何か特別な操作をする手間は一切かかりません

仮設トイレの衛生面や、使えないかもしれないという不安から解放されることは、避難者にとって大きな安心材料です。

汲み取り不要で衛生的な空間を維持

このシステムは、処理水を浄化・循環させて利用するため、仮設トイレのような定期的な汲み取りが不要です。

水洗式なのでトイレが汚れにくく、常に衛生的な環境を保てます。
不衛生なトイレで問題となりがちな、臭いの発生や感染症のリスクを大幅に低減させます。
これにより、避難者はもちろん、避難所を管理する担当者の負担も軽減されるでしょう。

利用者のプライバシーと不安を解消

仮設トイレやマンホールトイレで課題となりがちなのが、プライバシーやセキュリティの問題です。
とくに夜間の利用では、多くの人が不安を感じます。

循環型・独立式トイレシステムは、普段使っている公園のトイレなどをそのまま活用するため、利用者は安心して使えます。鍵のかかる個室で、プライバシーが確保されていることは、とくに女性や子どもにとって肝要です。
このようなトイレに対する利用者の不安を根本から解消できる点も、大きなメリットといえます。

土壌微生物膜浄化槽「ソフィール」が選ばれる理由

循環型・独立式トイレシステムを具体的に実現するのが、土壌微生物膜浄化槽「ソフィール」です。

ソフィールは、独自の技術と災害時の運用を想定した設計により、既存の災害用トイレが抱える多くの課題を解決します。
平時から利用でき、有事の際にもそのまま活躍する高い性能を持っています。

ここでは、ソフィールが選ばれている4つの理由を見ていきましょう。

  • 独自技術で処理水は無色透明・無臭
  • 災害時でもスムーズに利用を継続できるシステム
  • 処理水を再利用できるサステナブルな仕組み
  • 維持管理が容易でライフサイクルコストを低減

これらの特徴が、災害に強い持続可能なトイレ環境を実現します。

独自技術で処理水は無色透明・無臭

ソフィールは、土壌が持つ浄化能力を最大限に活用した、高度な処理能力が特徴です。
土壌微生物膜で処理された水は、し尿臭が完全になくなり、色も黄茶色から無色透明になります。

この無色・無臭のきれいな処理水があるからこそ、トイレの洗浄水として安心して再利用可能です。
災害時でも、誰もがためらうことなく使える衛生的な水環境を提供できます。

災害時でもスムーズに利用を継続できるシステム

ソフィールは、災害発生時に利用者が特別な操作をする手間がかからないように設計されています。
断水や停電が起きても、小規模な非常用電源があればシステムは稼働を続けます。

利用者が特別な切り替え作業をする必要はありません。
これは、マンホールトイレのように災害時にテントを設営したり、利用方法の訓練が必要だったりする手間をなくします。
誰でも、いつでも、いつもどおりに使えるシンプルさが、混乱した状況下で大きな力となるでしょう。

処理水を再利用できるサステナブルな仕組み

ソフィールで浄化された水は、トイレの洗浄水として循環利用できます。
これにより、断水時でも水洗トイレを使い続けることが可能です。

災害時に貴重となる水を外部から確保することなく、施設内で循環させて有効活用する仕組みです。
このサステナブルなシステムは、防災対策だけでなく、平時における水資源の有効活用や環境負荷の低減にも貢献します。

維持管理が容易でライフサイクルコストを低減

ソフィールは、一次処理槽と土壌浸潤槽などを組み合わせたシンプルなシステムです。
従来の方式に比べて消費電力がごくわずかで、電気代を削減可能です。

保守点検回数は規模や型式により年数回(例:51~500人槽で年3~6回程度)と定められており、ソフィールは維持管理の負担軽減が図れます。
これにより、導入後のランニングコストが安く抑えられます。
長期的な視点で見たライフサイクルコストを低減できる点も、多くの施設で選ばれている理由です。

参考資料:国土交通省「浄化槽法体系における基準について」

ソフィール導入事例:松崎尾崎防災公園(宮城県気仙沼市)

「ソフィール」は、全国の防災施設でその性能が評価され、導入されています。
代表的な事例が、宮城県気仙沼市の「松崎尾崎防災公園」です。

この公園は運動広場などを備え、平常時は市民の憩いの場として利用されます。
しかし、津波襲来時には一次避難所として活用される、地域の防災拠点でもあります。
多くの人が集まるこの場所で、断水時でも確実に水洗トイレを機能させるという目的のため、ソフィール循環システムが採用されました。

>>ソフィール製品カタログはこちら

まとめ:未来の防災計画のために持続可能なトイレ対策を

災害時のトイレ問題は、被災者の生命と尊厳に直結する重要課題です。
従来の携帯トイレや仮設トイレ、マンホールトイレには、それぞれ構造的な限界が存在します。
これらの課題を解決する循環型・独立式トイレシステムは、断水・停電時でも通常の水洗トイレとして機能し、被災者に安心と快適さを提供します。

土壌微生物膜合併処理浄化槽「ソフィール」は、10~500人槽まで対応可能です。処理水質はBOD 2.1mg/L、SS 0.5mg/L(除去率はBOD 98.3%、SS 98.8%)という高い性能を実現しています。

持続可能な防災トイレ対策で、地域の安全と安心を守りませんか?製品カタログもご用意しております。防災製品としての導入をご検討の際は、H.O.C株式会社(TEL:0957-53-2112)までお問い合わせください。