COLUMN
コラム
公共トイレ工事における建築工法とユニット工法の違い
公共トイレの新設や改修を計画する際、デザイン性やコスト・工期など、考慮すべき点は多岐にわたります。
とくにどのような工法で建設するかという選択は、施設の品質や将来の維持管理にまで影響を及ぼすため、慎重な判断が求められるでしょう。
本記事では、公共トイレ工事でおもに採用される「建築工法(在来工法)」と「ユニット工法」の2大工法を比較します。
ぜひ最適な工法選定のための、判断材料としてお役立てください。
公共トイレの整備で重要な「工法」の選択
公共トイレは、駅・公園・観光地などで日々多くの人が利用する都市インフラです。
その整備において工法の選択は、初期費用だけでなく、工期・維持管理・利用者満足度すべてに影響を与える意思決定となります。
ここでは、以下2つの観点から工法選択の重要性を解説します。
- 公共トイレが果たす役割
- なぜ工法選びが重要なのか?
それぞれ見ていきましょう。
公共トイレが果たす役割
現代の公共トイレは、単に用を足す場所というだけでなく、多様な社会的役割を担っています。
高齢者や車いす利用者が安心して外出するための場所であり、多様な利用者が安心して利用できるスペースでもあるからです。
また、公共トイレの清潔さや快適性は、利用者の満足度や施設の印象に影響を与える要素となります。
排泄という基本的なニーズを満たすことはもちろん、手洗いや身だしなみを整える場として利用されることも。
このように、公共トイレは誰もが安心して社会参加するために不可欠なインフラであり、その整備は地域社会全体の利便性向上に貢献します。
なぜ工法選びが重要なのか?
公共トイレの役割が多様化する中で、その建設方法である「工法」の選択は、プロジェクト全体の成否を左右する決定となります。
なぜなら、工法の違いが工期やコスト、品質・デザイン・メンテナンス性といった、プロジェクトの根幹をなすものに直接影響を与えるからです。
たとえば、工期を最優先するなら現場作業が少ない工法が有利ですが、その場合、デザインの自由度が制限される可能性があります。
反対に、デザインにこだわると、工期やコストが増加する傾向にあります。
このように、各要素は互いに影響し合う関係にあることが少なくありません。
建築工法とユニット工法とは?
公共トイレ工事で採用される工法は、大きく分けて2種類あります。
それぞれに異なる特徴があり、その違いを理解することが適切な工法選定の第一歩です。
ここでは、以下2つの工法を紹介します。
- 建築工法(在来工法)の特徴
- ユニット工法(プレハブ工法)の特徴
両者の基本的な概念を掴むことで、後の比較がより深く理解できます。
建築工法(在来工法)の特徴
建築工法は「在来工法」とも呼ばれ、建設現場で基礎工事から始まり、職人が一つひとつの工程を積み上げて建物を完成させる、伝統的な建築方法です。
住宅建築をイメージすると分かりやすいでしょう。
まず土地に基礎を築き、柱や梁を組み立て、壁や屋根を取り付け、内装や設備工事を施します。
公共トイレの場合も同様に、現場でコンクリートを打ち、壁や屋根を造り、タイルを貼り、便器や手洗い器を設置するという流れです。
すべての工程が現場で行われるため、設計の自由度が高く、まさに「オーダーメイド」の工法といえます。
ユニット工法(プレハブ工法)の特徴
ユニット工法は、工場で製造された完成品に近い「箱(ユニット)」を現場に運び込み、クレーンなどで設置・連結して建物を完成させる方法です。
これは「プレハブ工法」の一種に分類されます。
工場では壁や床、天井といった構造体だけでなく、便器や手洗い器、照明・配管といった設備も精密に組み込まれた状態でユニットが生産されます。
そのため、現場での作業は事前に作られた基礎の上にユニットを据え付け、電気や水道といったライフラインを接続する作業が中心です。
この特性により、現場での作業期間を劇的に短縮できるのが最大のメリットです。
建築工法とユニット工法の違いを比較
建築工法とユニット工法には、以下のようにあらゆる面で明確な違いがあります。
比較項目 | 建築工法(在来工法) | ユニット工法(プレハブ工法) |
工期 | 長い(数週間~半年程度) | 短い(現場作業は数日~) |
コスト | 高くなる傾向(人件費など) | 抑えられる傾向 |
品質 | 職人の技術力に左右されやすい | 均一で安定している(工場生産) |
デザインの自由度 | 高い(オーダーメイド可能) | カスタムメイドやフリープランニングは可能だが、間取りなど一部に制限がある |
メンテナンス性 | リフォームの自由度が高い傾向 | アフターメンテナンスが可能(大規模なリフォームには制約がある場合も) |
現場への影響 | 大きい(騒音・廃棄物が多い) | 小さい(据え付け時のみ) |
これらの違いを総合的に評価し、プロジェクトの優先順位に応じた選択が賢明です。
メリット・デメリットから見る工法の選び方
ここでは、以下2つの工法について、それぞれの長所と短所を解説します。
- 建築工法のメリット・デメリット
- ユニット工法のメリット・デメリット
詳しく見ていきましょう。
建築工法のメリット・デメリット
まず最大のメリットは、設計の自由度が高い点です。
土地の形状が特殊な場合や、周囲の景観と完全に調和させたい場合など、デザインや素材を自由に選んで唯一無二のトイレを建設できます。
現場で一から建設するため、大型トラックやクレーンが入れないような場所でも工事を進められる点も強みです。
一方でデメリットとして、多くの工程を現場で行うため工期が長くなり、天候の影響も受けやすいことがあげられます。
また、多くの専門職人が長期間作業するため人件費がかさみ、コストが高くなりがちです。さらに、仕上がりの品質が職人の技術力に大きく依存するため、とくに防水処理などの質にばらつきが生じる可能性があります。
ユニット工法のメリット・デメリット
最大のメリットは、工期が圧倒的に短いことです。
現場での作業は据え付けと接続工事が中心のため、周辺への騒音や交通規制などの影響を最小限に抑えられます。
管理された工場環境で生産されるため、天候や職人の技術に左右されず、常に均一で安定した品質を確保できる点も大きな強みです。これにより、建築工法に比べてコストを抑えやすい傾向があります。
一方、デメリットとして、完成したユニットをクレーンなどで設置するため、搬入経路や作業スペースが確保できない場所には設置不可能な点です。
構造が一体化しているため、将来的な大規模リフォームがしにくい場合がある点もあげられます。しかし、ユニット工法においても、多様なプランと素材でカスタマイズが可能であり、要望に応じたサイズや外観で設計可能なフリープランニングを提供している製品もあります。
このような公共施設にはどちらの工法が向いている?
工法の選定は、施設の目的や周囲の環境と密接に関連しています。
ここでは、以下3つのケースに分けて、どちらの工法が向いているかを解説します。
- 都市部・景観重視→建築工法
- 設置スピード重視・仮設用途→ユニット工法
- 予算・設置環境に応じて選ぶのが基本
これらの事例を参考に、自社のプロジェクトに最適な工法を見極めてください。
都市部・景観重視→建築工法
歴史的な街並みが残るエリアやデザイン性の高い建物が並ぶ都市部など、周囲の景観との調和が求められる場所は、建築工法がその真価を発揮します。
建築工法のメリットである「設計の自由度の高さ」を生かし、外観のデザインや使用する素材を完全に自由に選べるからです。
たとえば、モダンなビル街にはガラスや金属を多用したシャープなデザインを採用するなど、その場所に溶け込むトイレを建設できます。
このように、景観を最優先し、その場所にしかない唯一無二のトイレを実現したい場合には、オーダーメイドで対応できる建築工法が有効な選択肢となります。
設置スピード重視・仮設用途→ユニット工法
公園や観光地などで、利用者が少ないオフシーズンを利用して短期間で工事を完了させたい場合、ユニット工法は有効な選択肢です。
工場で完成品に近い状態まで製造するため、現場での作業は据え付けとライフラインの接続が主となり、工期を短縮可能です。
仮設用途の場合、使用後の撤去や移設が容易な点も大きなメリットといえます。
公園や駐車場などの郊外施設で、基本的な機能を満たせば十分な場合も、ユニット工法が適しています。
標準化された製品のため、故障時の部品調達やメンテナンスも迅速に行え、運用面でも効率的です。
予算・設置環境に応じて選ぶのが基本
最終的に、どちらの工法が絶対的に優れていることはありません。
最適な選択は、プロジェクトごとに設定される優先順位によって異なるからです。
たとえば、デザイン重視なら建築工法、工期・予算・品質安定ならユニット工法が適しています。
ユニット工法は大型車両やクレーンでの搬入が必要で、設置場所の制約があります。
しかし、狭小地には小型車両、クレーン不可の場所には曳家工事、離島には貨物船搬送など多様な対応が可能です。
このように、最適な工法はデザインや工期、コスト・品質・設置環境を総合的に検討し、プロジェクト目的に合致するものを選ぶことが大切です。
公共トイレ工事で工法選定時に注意すべきポイント
ここでは、工法選定時にとくに注意すべき3つのポイントを解説します。
- 設置場所の環境(面積・アクセス・地盤)
- 利用者層(バリアフリー対応など)
- 将来的なメンテナンス・更新性
それぞれ見ていきましょう。
設置場所の環境(面積・アクセス・地盤)
公共トイレを設置する際は、その場所の物理的な条件を詳細に調査することが欠かせません。
トイレ本体を設置する十分な面積が確保できるかは基本ですが、とくにユニット工法を検討する場合には追加の確認事項があります。
完成品のユニットを運ぶための大型トラックが通行可能か、現場でクレーン車を設置し、安全に作業できるスペースがあるかという確認です。
この確認を怠ると、ユニットが現場に届かないという致命的な事態になりかねません。
どちらの工法を選択するにしても、建物の安全性を確保するための地盤調査は必須です。
利用者層(バリアフリー対応など)
公共トイレを「誰が、どのように利用するのか」を具体的に想定することは、工法選定においても肝心です。
たとえば、高齢者や車いす利用者の多い施設は、手すりの設置や車いすが回転できる十分なスペースの確保といったバリアフリー対応が必須です。
公園や商業施設など、子ども連れの利用者が多い場所では、おむつ交換台やベビーチェアの設置が求められるでしょう。
このように、想定される利用者層から必要な設備をリストアップし、選択しようとしている工法で問題なく実現可能かを確認する必要があります。
とくにユニット工法の場合は、設備の追加がオプション対応になることもあるため、標準仕様と合わせて確かめることが大切です。
将来的なメンテナンス・更新性
ユニット工法は、工場生産による高い防水性能や品質管理により耐久性に優れ、日々のメンテナンスの手間やコストを抑えやすいという利点があります。しかし、鉄骨やパネルで構成された頑丈な構造のため、大規模な改修や間取りの変更といったリフォームは、在来工法に比べて難しい場合があります。
高額な費用がかかる傾向にあり、場合によっては建て替えが選択肢となることもあるため、長期的な視点での更新性を考慮することが大切です。
一方、建築工法は構造が複雑でない場合、将来的に配管や設備の一部を更新したり、部分的な修繕を行ったりする際に比較的対応しやすい場合があります。
建設時にかかる初期費用だけでなく、維持管理費まで見据えて工法を検討することが、コストを最適化する賢明な選択につながります。
まとめ
公共トイレの工法選定は、デザインや工期だけでなく、長期的な視点も大切です。
とくに災害時の機能維持や環境への配慮は、これからの公共施設に欠かせません。
H.O.C株式会社では、お客様の多様なニーズにお応えする、以下のパブリックトイレのラインナップをご用意しております。
お客様の計画に最適な製品をご提案いたしますので、ぜひ一度製品ラインナップをご覧いただき、お気軽にご相談ください。