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2025年09月12日

公共トイレの維持管理費はどれくらい?主な費用項目や削減方法も解説

公共トイレの維持管理について、年々増加するコストやその内訳に頭を悩ませていませんか?
快適性を保ちながら費用を削減するのは、難しい課題です。
具体的な改善策を立てたくても、比較対象となるデータがなければ、計画の妥当性を判断しにくいでしょう。

本記事では、実際の自治体データをもとに、公共トイレの維持管理費の具体的な費用項目を解説します。
ぜひ参考にしていただき、予算計画や改善提案に役立つ実践的な知識を得てください。

【自治体別事例】公共トイレの維持管理費

公共トイレの維持管理費は、施設数や立地条件により大きく異なります。
実際の自治体データを確認することで、自施設の費用が適正かどうかの判断材料となるでしょう。

ここでは、以下2つの事例を紹介します。

  • 周南市は年間約130万円
  • 鎌倉市は年間約3658万円

これらの事例から、1施設あたりの費用や管理体制の違いが明確になります。

周南市では年間約130万円

山口県周南市では、5箇所の駅前公衆トイレの維持管理費として、年間約130万円を支出しています。
これらのトイレは、鉄道利用者の減少を受けてJR西日本がトイレを撤去する中、市が待合環境を維持する目的で設置したものです。
主な支出は、光熱水費と清掃委託料で占められています。

施設は2006年から2021年にかけて順次設置された比較的新しいものが多く、当面は大規模な修繕の必要がないこともコストを抑えている要因です。
そのため、市の評価でも現状のまま継続して利用していく方針が示されています。

参考資料:周南市駅前公衆トイレ 施設分類別計画

鎌倉市は年間約3658万円

観光都市である鎌倉市では、市内37箇所の公衆トイレの維持管理に、年間で約3,658万円を支出しています。これは市民1人あたりに換算すると、283円の負担に相当します。
支出の主な内訳を見ると、清掃業務委託料が約2,155万円、水道料が約1,259万円と、費用の大部分をこの2項目で占めていることが分かります。
利用頻度が高い観光地ならではのコスト構造といえるでしょう。

市では、清潔さを保つため、委託契約の仕様に清掃方法を詳細に定めるなどの改善策を講じています。

参考資料:鎌倉市「公衆トイレ清掃事業」

公共トイレの維持管理費の主な費用項目

維持管理費を削減するには、まずどのような費用がかかっているのかを正確に把握することが肝心です。

維持管理費の主な費用項目は、以下のとおりです。

費用項目 費用割合の目安 主な内容
清掃費用 50~60% 日常清掃、ゴミ回収、簡易点検
光熱水費 30~40% 水道料、電気料
維持修繕費 2~10% 便器修理、配管補修、ドア修理
消耗品費 3~5% トイレットペーパー、石鹸、消毒液
運搬費 特殊立地のみ 物資運搬、し尿搬出

これらの項目ごとの費用を定期的に分析し、見直すことがコストの最適化につながります。
参考資料:周南市駅前公衆トイレ 施設分類別計画
参考資料:鎌倉市「公衆トイレ清掃事業」
参考資料:環境省「山岳トイレの維持管理費等調べ」

清掃費用

維持管理費全体の50~60%を占める最大の費用項目です。鎌倉市の事例では、年間約2155万円(全体の59%)が清掃業務委託料として支出されています。
清掃頻度は施設の利用状況により異なりますが、一般的に1日1~2回の日常清掃が基本となります。
観光地や駅前など利用頻度の高い施設では、1日3回以上の清掃が必要な場合もあるでしょう。
委託内容には、床・便器の清掃、ゴミ回収、簡易な点検業務が含まれています。

鎌倉市では、利用頻度の高い公衆トイレにおける清潔感の維持が課題となっている状況です。
委託契約の仕様に清掃方法を詳細に定めるなどの見直しを進めるとともに、効率性を考慮した委託の検討が求められています。

光熱水費

維持管理費の30~40%を占める第2の費用項目です。

鎌倉市では水道料が年間約1259万円(34%)、電気料が約120万円(3%)となっており、合計で全体の37%に達しています。
水道料金は利用者数に比例して増加する変動費的な性質があります。

節水型便器やLED照明への切り替えなど、設備の更新により光熱水費の削減が期待できる可能性も。
24時間開放施設では夜間の照明費用も無視できないため、人感センサーの活用も検討に値します。

維持修繕費

維持修繕費は年間の維持管理費の2~10%程度を占めています。鎌倉市の事例では年間約70万円で、全体の約2%という比較的少ない割合となっていますが、施設の老朽化により急激に増加する可能性があります。

主な修繕内容は、便器の詰まり除去、ドアの不具合修理、配管の水漏れ対応などです。予防保全を実施することで、突発的な大規模修繕を回避できるでしょう。施設の築年数が20年を超えると、修繕費が急増する傾向にあります。

計画的な設備更新により、長期的なコスト削減と利用者満足度の向上を両立できます。

消耗品費

トイレットペーパーや石鹸、消毒液などの衛生用品がおもで、利用者数に比例して増減します。
山岳トイレの事例では、個別の支出項目として消耗品費があげられています。

大量購入による単価削減や、品質と価格のバランスを考慮した製品選定が効果的です。
とくに観光地では、外国人観光客への配慮から、品質の高い製品が求められることもあるでしょう。
消耗品の在庫管理を適切に行うことで、無駄な支出を抑制できます。

運搬費

山岳地や離島など、特殊な立地条件の施設で発生する費用の項目です。
富士山山頂のトイレでは、ヘリコプターによる物資運搬費が年間200万円に達しており、維持管理費全体の大きな割合を占めています。

北アルプスの山岳トイレでも、年間約12万円から32万円程度の運搬費が発生しています。
これらの費用は、消耗品や修繕資材の運搬、し尿の搬出などに必要不可欠です。
アクセスが困難な立地では、1回の運搬で効率的に物資を輸送する計画性が求められるでしょう。

特殊立地の施設では、運搬費を含めた総合的なコスト管理が必要となります。

自治体の事例に学ぶ公共トイレで維持管理費を削減する方法

維持管理費の削減は、サービスの質を落とさずに行うことが大切です。
そのためには、成功事例から具体的な手法を学ぶのが近道といえます。
小さな改善の積み重ねが、大きなコスト削減につながることも少なくありません。

ここでは、以下4つの削減方法を紹介します。

  • 清掃仕様書を見直し委託内容を最適化する
  • 悪臭対策として防臭剤の設置を試行する
  • 公共下水道が未整備ならバイオ処理方式を検討する
  • 消耗品配備まで含めた総合的な管理委託を検討する

それぞれ見ていきましょう。

清掃仕様書を見直し委託内容を最適化する

鎌倉市では、清掃仕様書に「施設内を必ず水拭きとする」などの詳細な清掃方法を明記することで、品質向上とコスト管理の両立を実現しました。
従来の曖昧な仕様から具体的な作業内容を定めることで、業者への指導が明確になります。

仕様書の見直しにより、使用頻度の高いトイレには作業員を増員し、利用の少ない施設は清掃頻度を調整するなどメリハリのある管理が可能となりました。
利用者からの苦情件数は、20年度には5件ありましたが、22年度には目標の1件まで削減されています。

適切な仕様書は、委託業者との認識のズレを防ぎ、効率的な管理につながります。

悪臭対策として防臭剤の設置を試行する

鎌倉市では、悪臭の苦情が寄せられていた2箇所のトイレに試験的に防臭剤を設置し、効果を検証しました。
防臭剤の設置は悪臭に関する苦情件数の減少につながり、21年度の本格設置に向けて予算化されました。

とくに夏場の悪臭対策として効果的で、苦情件数の削減にもつながっています。
試行期間を設けることで、費用対効果を検証してから本格導入を判断できるのも利点です。
小規模な投資で大きな改善効果が得られる、好事例といえるでしょう。

公共下水道が未整備ならバイオ処理方式を検討する

山間部や公園など公共下水道が整備されていない場所では、バイオ処理方式の導入が効果的です。鎌倉市の天園公衆トイレは、公共下水道が未整備でした。
そのため、21年度に簡易水洗式から環境への負荷が少ないバイオ処理方式のトイレに改築。
ただし、設置上の根本的な問題は解決されていない状況です。

バイオ処理方式は、一般的に微生物の力で汚物を分解するため、環境への負荷が少ないとされています。
これにより、汲み取り頻度の削減や維持管理費の削減、臭気の抑制、利用者の快適性向上といった効果が期待されます。

消耗品配備まで含めた総合的な管理委託を検討する

鎌倉市では、現在直営で行っている消耗品の配備を含め、清掃業務と総合的な維持管理を効率的に委託することを検討しています。
これにより、業務の効率化や管理の一元化、コスト削減が期待されています。

総合管理委託のメリットは、責任の所在が明確になることです。
トイレットペーパーの欠品や石鹸の補充漏れなど、利用者の不満につながる問題を防げます。
また、職員の巡回業務も削減でき、ほかの業務に人員を振り分けられるでしょう。
複数施設を一括契約することで、スケールメリットによる単価削減も期待できます。

まとめ:持続可能な公共トイレ運営のために

公共トイレの維持管理費を最適化し、利用者にとって快適な空間を提供することは、持続可能な地域運営において重要なテーマです。
課題を解決するためには、設置場所の条件や求める機能、予算に合わせた最適なトイレを選ぶことが大切です。

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施設の更新や新設をご検討の際は、一度製品カタログをご覧になってはいかがでしょうか?ぜひお気軽にお問い合わせください。