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公開日:2025年11月26日 更新日:2025年11月28日
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防災公園とは?防災トイレ・かまどベンチなど設備と導入事例を解説

大規模災害が発生したとき、避難者の命を守るための施設が防災公園です。
防災公園は単なる緑地や休憩場所ではありません。災害時の生活を支えるさまざまな設備が整っています。

中でも、防災トイレやかまどベンチなどは被災生活に欠かせない機能を持ちます。
防災公園の設備や制度を知ることで、災害時には避難者の安全と安心を守ることにつながるでしょう。

本記事では、防災トイレの種類や全国の導入事例、導入費用や補助金制度まで、防災公園の整備に必要な知識をお伝えします。
自治体や公園管理者の方は、参考にしてください。

防災公園とは?

防災公園は平時は憩いの場、災害時は避難・復旧拠点として機能する特別な公園です。
都市公園法に基づき地域防災計画で決められた、さまざまな役割があります。

  • 普通の公園との違い
  • 防災トイレの種類と機能
  • かまどベンチの構造と役割
  • 水・電源設備の種類と役割

上記の設備がなぜ必要なのか、どう機能するのかを知ることで、自治体や施設としての防災対策の現状が見えてきます。

普通の公園との違い

普通の公園はレクリエーションや運動が目的です。
しかし防災公園は、避難者の生命を守り、復旧活動を支えることを前提に設計されています。

最大の違いは「地域防災計画に明記されているか」で、以下が含まれる必要があります。

  • 避難地・避難路・復旧拠点の計画
  • 広域避難地10ha以上・一次避難地2ha以上の面積
  • 防災設備の完備

中でもトイレは大切で、新潟中越地震では亡くなった方の半数近くが「関連死」です。
一因に、トイレを我慢せざるを得なかった状況もあげられています。

防災公園ではこうした事態を防ぐため、インフラ遮断時でも使えるトイレが設置されます。

参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン

防災トイレの種類と機能

防災公園に設置されるトイレは、インフラが機能しなくても使える3つのタイプがあります。

種類 仕組み 特徴
マンホール型 下水道直結
  • 水道停止でも流せる
  • 通常トイレに近い利便性
    地下便槽式 地下ピット貯留
    • 既存トイレを改修可能
    • 復旧後は水洗に戻せる
      簡易トイレ 組立式便器・便袋
      • 工事不要で備蓄可
      • 複数台設置できる

        用途に応じて使い分けることで、被災者の衛生と安心を確保できます。
        中でも簡易トイレは、想定人数の利用回数を計算し、余裕をもって備蓄しておくことで、災害時のトイレ不足を防げます。

        なお、マンホール型トイレは下水道処理場が被災していないことが前提です。

        参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン

        ▼防災トイレについて詳しく知りたい方はこちら
        災害時のトイレ回数と備蓄目安は?簡易トイレの種類と選び方も解説

        かまどベンチの構造と役割

        かまどベンチは、災害時には炊き出し用かまどに変形するベンチで、被災直後の混乱した状況でも迅速に利用できます。

        かまどベンチの役割は、「被災地での炊き出し」です。
        避難所では、食事を配る体制が整うまで時間がかかります。
        その間、避難者の自力炊事を支援し、健康状態を整える助けになるのです。

        東京都江東区の木場公園では、かまどベンチが月1回、職員による組立訓練で動作確認されています。

        なお、使用時には煙対策が必要です。
        開放空間を確保すれば、安全に炊き出しが行えます。

        水・電源設備の種類と役割

        防災公園では飲料水・洗浄水・電力確保も大切です。
        揚水ポンプは、地下貯水槽から水を汲み上げ、トイレや手洗いに利用可能です。

        ソーラー照明灯は、昼間に太陽光を蓄電、夜間の照明として機能するため、停電時の夜間照明として活用できます。

        緊急給水ベンダーは、平時は自販機、災害時は無償で給水する仕組みです。

        これらの設備が統合された防災公園は、長期間の避難生活のサポートに役立ちます。

        東京都・大阪府の防災公園一覧と実装事例

        全国で防災公園の整備が進む中、注目したいのが東京都と大阪府の例です。
        既存の導入事例から学ぶことで、防災公園の実装形態が見えてきます。

        • 東京都・大阪府の防災公園一覧
        • 実装事例1. 東京臨海広域防災公園/そなエリア東京(東京都江東区)
        • 実装事例2. 木場公園(東京都江東区)
        • 実装事例3. 東町公園(新潟県燕市)

        自治体がどのように防災機能を取り入れ、運用しているのか、都市部と地方の例を見ていきましょう。

        東京都・大阪府の防災公園一覧

        都内の公園は63ヶ所が防災公園として位置づけられ、40ヶ所以上が避難場所に指定されています。
        一部を紹介しましょう。

        • 芝公園
        • 上野恩賜公園
        • 木場公園

        都内の防災公園について、詳しくはこちらを参考にしてください。

        中でも中央区では、防災トイレの整備に力を入れており、地域ごとに計56ヶ所の防災トイレを配置。
        アクセスのしやすさも抜群です。

        大阪府堺市でも複数公園で防災トイレ整備が進行し、南海トラフ対策の実効性向上に取り組んでいます。

        参照:公益財団法人 東京都公園協会「防災公園の位置
        参照:中央区「トイレ対策(災害時に活用できるトイレ)
        参照:堺市「防災トイレのある公園

        実装事例1. 東京臨海広域防災公園/そなエリア東京(東京都江東区)

        東京臨海広域防災公園は、広域防災拠点としての機能を備えた大規模施設です。
        園内の防災体験学習施設「そなエリア東京」では、首都直下地震への備えを体験的に学べます。

        館内を見てみましょう。

        • 「東京直下72hTOUR」:地震発生後72時間を生き抜く体験型学習
        • 津波避難体験コーナー:津波の特徴や避難方法を学習
        • オペレーションルーム:地震発生時、国の緊急災害対策本部候補地として機能

        平時は市民向けの見学も行われ、防災体制の「見える化」につながっています。
        行政支援が届きにくい発災直後の自助力を高める場として、市民が防災体制を理解する貴重な学習拠点となっているのです。

        参照:東京臨海広域防災公園「防災体験学習(そなエリア東京)

        実装事例2. 木場公園(東京都江東区)

        木場公園は、広域避難地として整備が進んだ代表例です。複数の防災機能を備えています。

        • マンホール型トイレ38基
        • 災害時用便槽付き公衆トイレ
        • かまどベンチ(月1回の訓練実施)
        • 地下貯水槽+揚水ポンプ
        • ヘリポートとして利用可能な広場

        地域住民・学校が参加する訓練が月1回開催されているのがポイントです。
        設備の動作確認のほか、職員・地域住民の災害時の対応スキルも向上する仕組みが整えられています。

        防災設備は「設備」と「訓練」がそろってこそ、最大の効果を発揮するのです。

        参照:公益財団法人 東京都公園協会「防災施設運用訓練を実施しました

        実装事例3. 東町公園(新潟県燕市)

        新潟県燕市の東町公園は、大きな被害のあった中越地震の教訓を反映した多機能型の防災公園です。

        • お風呂に変形するパーゴラ:テーブルが簡易風呂に
        • 備蓄倉庫付き展望台:非常食や毛布などを収納
        • ワンポールシェルター・トイレスツール:4基のスツールが簡易トイレに
        • かまどベンチ:炊き出し機能
        • 防災収納ベンチ:救助活動に役立つ工具を収納
        • 防災あずまや:要介護者の一時休憩スペース

        定期防災訓練では、水消火器の消火訓練、AEDを用いた心肺蘇生法訓練など実践的なプログラムも多数実施
        「防災を学べる公園」として、6種類の防災施設と訓練実施が地域の自助力を高めています。

        参照:燕市「防災施設を備えた公園の整備(東町公園)
        参照:国土交通省「事例集

        防災設備の導入費用

        防災公園の整備にあたり、避けて通れないのが費用の問題です。
        防災トイレやかまどベンチを複数導入する場合、規模が大きくなるほどコストも増加します。

        • 防災トイレ・かまどベンチの導入費用相場

        導入の規模を把握して、予算を見積もりましょう。

        防災トイレ・かまどベンチの導入費用相場

        防災公園の整備費用は、トータルコストで検討する必要があります。
        設備の種類、導入数、地盤条件によって大きく変わるため、予算を組む際は注意が必要です。

        【中央区の事例】

        • 3地域で計56ヶ所の防災トイレを段階的に整備
        • 複数年度にわたる計画的な投資

        【木場公園の事例】

        • マンホール型トイレ38基、かまどベンチ、揚水ポンプ、ソーラー照明
        • 複数の設備を統合した大型プロジェクト

        いずれにしても大規模な予算編成が必要です。自治体は国庫補助や地方債を活用し、自己負担を抑えながら計画的に導入しています。

        防災トイレやかまどベンチ導入で活用できる補助金

        防災公園の整備費は、国や自治体の補助金活用によってコスト負担を軽減できます。
        計画段階から、補助金活用を視野に入れておきましょう。

        • 国庫補助制度
        • 自治体の支援制度

        早めに自治体に確認することが大切です。

        国庫補助制度

        防災公園の整備には、国土交通省による「防災・安全交付金」が利用できる場合があります。
        防災公園整備においては、以下の設備が対象です。

        • 防災トイレ
        • かまどベンチなどの炊き出し設備
        • 耐震性貯水槽
        • 備蓄倉庫
        • 放送施設
        • ヘリポート

        補助対象経費には、以下があげられます。

        • 設備本体の購入費
        • 工事費
        • 実施設計費

        申請は2〜3月に要望書を提出後、6月頃に決定通知が届く流れです。
        補助を受けるには、地域防災計画への明記が必須です。
        自治体の防災部局と公園部局が連携し、公園の防災機能を計画に位置づけることが前提となります。

        施工完了までは、複数年度かかることが一般的です。

        参照:国土交通省「活用可能な補助制度の例(令和7年2⽉現在)

        自治体の支援制度

        国庫補助に加えて、自治体独自の補助制度を活用できる場合があります。

        新潟県の事例では、中越地震の経験から、複数の防災機能が統合された防災公園(東町公園)が整備されました。

        なお、防災公園の整備では、地域防災計画への明記や事業規模の要件も確認する必要があります。

        • 市区町村事業:2.5億円以上
        • 都道府県事業:5億円以上

        地域ごとの補助制度は、各自治体の防災部局・公園部局に相談しましょう。

        申請時は、防災部局・公園部局・財務部局が連携し、計画〜予算化までを一体で進めなければなりません
        補助金を上手に活用し、計画的な整備を心がけましょう。

        参照:国土交通省「活用可能な補助制度の例(令和7年2⽉現在)
        参照:国土交通省「防災公園の整備

        防災公園のメリット・デメリット

        防災公園には、災害時の生活支援や安全確保など多くのメリットがあります。
        しかし、設置や運用には課題も伴います。

        • メリット:防災トイレは衛生面で有効
        • デメリット:かまどベンチは煙対策が必要

        両面を知ることで、導入後に必要な運用体制や管理方法が見えてきます。
        確実に準備して、災害時の安全・安心を大きく高めましょう。

        メリット:防災トイレは衛生面で有効

        防災トイレの最大のメリットは、感染症予防と避難者の健康維持です。
        不衛生なトイレはノロウイルスなどの感染を拡大させます。
        トイレの利用をためらう人が増え、脱水症状やエコノミークラス症候群といった関連死のリスクも高まります。

        マンホール型や地下便槽式なら、通常のトイレに近い使いやすさで心理的負担を軽減可能です。
        防災公園が整備されることで、避難者は身近で衛生的なトイレを使えて長期避難でも健康リスクを抑えられます。

        新潟中越地震の教訓を受け、トイレは生命に関わる大切な設備として位置づけられているのです。

        デメリット:かまどベンチは煙対策が必要

        かまどベンチは炊き出しに便利です。
        しかし、煙が周囲に広がり避難者に負担をかける場合があります。

        また、操作には一定のスキルが必要です。
        訓練に参加しない住民が増えると、災害時に設備を活用できません。

        防災トイレやかまどベンチは、平時の点検と訓練があってこそ機能するものです。
        設備の効果を最大限発揮するには、日頃からの準備が欠かせません。

        防災公園認定と導入までの流れ

        防災公園として認定されるには、国土交通省の基準を満たし、計画から運用まで段階的に進める必要があります。

        おもなステップは次のとおりです。

        1. 国土交通省基準の確認
        2. 計画・施工・認定手順の確認
        3. 運用・訓練・メンテナンスの実施

        各ステップを知ることで、スムーズに導入計画が立てられます。

        1. 国土交通省基準の確認

        防災公園として認められるには、面積や設備など複数の要件があります。

        要件の一例を紹介します。

        • 面積:広域防災拠点50ha以上、一次避難地2ha以上
        • 補助対象設備:園路・広場、便所・水飲場、備蓄倉庫など
        • 必須要件:地域防災計画に公園の防災機能が明確に位置づけられていること

        設備を揃えるだけでは不十分です。
        防災部局などが作成する計画において、施設レベルで災害時の役割と運営方法が明記されていなければなりません。
        また、当該計画が公表されていることが条件になります。

        参照:国土交通省「防災公園の整備

        2. 計画・施工・認定手順の確認

        防災公園整備は複数年度のプロジェクトです。
        実施フローを理解し、スムーズに事業を進めましょう。

        実施フローの例を以下に示しました。

        年次 おもな内容 詳細
        1年目 計画立案
        • 地域防災計画への位置づけ
        • 国土交通省地方整備局への事前相談
        • 防災部局と公園部局の連携体制構築
          2年目 申請・採択
          • 補助金要望書提出
          • 国の審査
          • 採択決定
            3年目 実施設計・施工
            • 設計作成
            • 入札
            • 工事着工
              4年目以降 完了・補助金交付
              • 工事完了報告
              • 補助金交付決定

                大規模事業の場合、分割施工となる場合もあります。
                その場合、毎年度の補助要望・採択など一連の流れが繰り返されることも考慮しておきましょう。

                参照:国土交通省 国土技術政策総合研究所「国総研資料 第 984 号

                ▼公共トイレについて詳しく知りたい方はこちら
                公共トイレの寸法は?基本知識・法令・施設ごとの平面図ポイントを解説

                3. 運用・訓練・メンテナンスの実施

                完成後は継続的な運用が必要です。
                設備があっても運用が伴わなければ十分に機能しません。

                • 定期点検:職員や住民(町内会やNPOと協力)による定期的な鍵開けや訓練
                • 防災教育への活用:小学校で防災教育に活用し、家庭へ波及する効果も
                • メンテナンス体制:定期保守契約で破損時の対応を整備
                • 被災時の運営マニュアル:災害時の設備管理・避難者の対応方法を文書化

                防災公園の認定・整備は、基準確認〜運用まで、一貫した計画が不可欠です。
                計画的な導入と継続的な運用で、防災公園の真価を発揮しましょう。

                ▼公共トイレについて詳しく知りたい方はこちら
                公共トイレの維持管理費はどれくらい?おもな費用項目や削減方法も解説

                まとめ:公園に防災トイレを備えて地域防災力を高めよう

                防災公園は、平時は市民の憩いの場、有事には避難者の生命を守る大切なインフラです。
                設備を整えるだけでなく、継続的な訓練や地域連携があってこそ機能が活かされます。

                防災トイレやかまどベンチなどの設備は、初期投資は確かに大きいものです。
                しかし、国庫補助や自治体の支援制度を最大限に活用できれば、実質負担を大幅に圧縮できます。

                H.O.C株式会社では、防災トイレパーゴラかまどベンチなど、防災公園に必要な各種設備をてがけています。
                多くの自治体での導入実績多数。
                貴自治体の防災ニーズに最適なソリューションをご提案します。

                防災公園の整備をご検討される場合は、お気軽にご相談ください。

                この記事の監修者

                西岡 良祐

                H.O.C株式会社 福岡営業本部 主任