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公開日:2025年11月28日 更新日:2025年11月28日
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屋外トイレの設置基準とは?設置方法・選び方・費用相場も解説

屋外トイレの設置を検討しているものの、法的な基準や選び方で迷っていませんか?

公園やイベント会場、商業施設などの屋外施設では、利用者が快適かつ衛生的にトイレを使えるかが大切です。
適切な設置基準を理解すると初期費用の無駄を防げるだけでなく、長期的な運用コストも抑えられます。

本記事では、屋外トイレ設置に必要な法的基準から選び方のコツ、費用相場まで設置に必要な情報をまとめました。
施設のニーズに合った最適なトイレ選びの参考として、活用してください。

屋外トイレ設置で確認すべき基準と法律

屋外トイレは、施設の都合だけでは設置できません。
事前に、以下3つの観点を押さえる必要があります。

  • 建築基準法による設置要件
  • 公衆トイレ設置基準
  • 自治体条例の要件

確認すべき基準を押さえ、スムーズな設置を心がけましょう。

建築基準法による設置要件

屋外トイレは建築基準法上の「建築物」として扱われます。
規模・条件によって省略可能なケースもありますが、設置には原則として建築確認申請が必要です。
災害時の断水や下水逆流など、トイレが機能しなくなる場合の対応も求められます。
具体的には、以下のような事態に対応できる設備が必要です。

  • 給水ポンプが停止して上層階への給水ができない
  • 下水道の破損で汚水が逆流する

建築基準法が定める基本的な要件は、以下のとおりです。

項目 内容
建築物の定義 屋内的用途のユニットトイレは建築物扱い
確認申請 規模・条件によって省略可だが原則必要
敷地条件 敷地面積、接道状況、地盤調査
構造計算 地盤情報に基づく計算書作成

屋外トイレが小規模であっても、手続きを省くと法的問題に発展する可能性もあります。
早めの建築士への相談をおすすめします。

参照:e-GOV法令検索「建築基準法

公衆トイレ設置基準

公衆トイレには、環境省の技術指針や各自治体のガイドラインがあります。

ガイドラインでは、衛生面と快適性の確保のため、目安や考慮すべき観点として利用者数に応じた便器数の検討が促されています。
事前の利用者調査なしに、設置数の検討は難しいでしょう。

ピーク時と通常時の差が大きい場所では、仮設トイレの併設で柔軟に対応する方法もおすすめです。

災害時には、以下の設置基準が定められています。

状況 目安
災害時 約50人に1基
長期避難 約20人に1基
女性 女性対男性の割合は3:1

具体例として、板橋区の例も見てみましょう。
板橋区では、災害対策と観光ルートの視点で公衆トイレ配置を検討しています。
区内には計31ヶ所の公衆トイレがあり、すべてが避難ルートや散策ルート周辺に配置されている点が特徴です。

参照:環境省「第3部 施設別技術指針 第5章 公衆便所 (自然地域トイレ含む)
参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン
参照:板橋区「公園・公衆トイレの適正配置・改修計画

自治体条例の要件

全国の自治体には、それぞれ独自の条例が定められています。
景観基準や配置制限、環境評価などが異なるため、設置計画の初期段階で所轄の自治体への事前確認が必要です。
A市では問題なくても、B市では追加工事が必要になるケースもあります。

設置計画初期に確認すべき項目は、以下のとおりです。

  • 景観基準(色・素材・デザイン)
  • 用途地域に応じた建築規制
  • 敷地の都市計画法上の扱い
  • 開発許可・環境アセスメントの要否

ただし、自治体により規定は異なります。
費用や工期に大きく影響する可能性があるため、敷地を決めた段階で確認を取りましょう。

参照:環境省「第3部 施設別技術指針 第5章 公衆便所 (自然地域トイレ含む)

屋外トイレの設置方法

屋外トイレといっても、設置方法はさまざまです。
環境や利用人数、予算によって適した工法が変わります。
代表的な3種類の特徴を比較して、自施設に合ったタイプを選びましょう。

  • 仮設トイレ設置のポイント
  • プレハブトイレ設置のポイント
  • 水洗式トイレ設置のポイント

順に解説します。

仮設トイレ設置のポイント

仮設トイレは、イベントや工事現場などで広く使われる方式です。
便槽式なら工事が不要で、搬入後はすぐに利用できる手軽さが利点です。
既存の施設に影響を与えることなく済むため、短期間の利用に向いています。

一方で、仮設トイレ設置には以下のデメリットもあります。

  • 汲み取り手配が必要
  • 臭い対策が課題
  • 和式が多く高齢者には不向きな場合も

設置の際は、風による転倒防止のため、確実に固定を行うことが実務上のポイントです。
汲み取り業者との事前協定を結び、適切な処理体制を整えておきましょう。
これにより、長期間の安定運用につながります。

参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン

▼避難所トイレについて詳しく知りたい方はこちら

▼公共トイレについて詳しく知りたい方はこちら
公共トイレ工事における建築工法とユニット工法の違い

プレハブトイレ設置のポイント

プレハブ工法(ユニット式)のトイレは、工場で製造されたユニットを現場で組み立て、設置する方法です。
品質がよく、安定した仕上がりが大きな強みです。
屋外トイレの利便性を損なわず、災害時にも機能します。

プレハブトイレのメリットとデメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
  • 耐久性が高く衛生的である
  • 工事が短期間で完了する
  • 平時・災害時の両立性が高い
  • 比較的デザイン性が高い
    • 建築確認申請が必要になる
    • 初期費用が高め
    • 搬入経路確保が必要になる
    • 改修コストや難易度が高くなる可能性がある

      プレハブトイレは公園や公共施設での設置に適しており、利用者満足度向上が期待できます。
      設置には、規模・設置形態により地盤調査や構造計算書の作成が必要になる場合があります。
      長期にわたる安全性確保に十分な準備が必要です。

      水洗式トイレ設置のポイント

      下水道が整備されている場所であれば、水洗式トイレを導入できます。

      仮設トイレや簡易トイレと異なり、家庭と同じ快適さで使える点が魅力です。
      衛生面も、利用者の満足度が高い方式です。
      女性や子どもをはじめ、高齢者にとって使いやすい環境につながるでしょう。

      導入の際は、以下の条件を満たさなければなりません。

      • 下水接続:公共下水道との接続工事
      • 給水設備:水道栓との接続や給水管の整備
      • 排水管:既存排水管との接続確認
      • 許認可:下水道管理者との協議・申請

      工事費は高めですが汲み取り費不要なため、長期的には管理コスト削減につながります。

      災害時に下水が被災した場合は機能しないため、浄化槽との併用を検討してもよいでしょう。

      ▼避難所トイレについて詳しく知りたい方はこちら
      避難所の女性向けトイレ対策|災害時に必要な備えと指針

      屋外トイレの選び方

      屋外トイレを選ぶ際は、以下3つの視点を基準に検討しましょう。

      • 設置場所で選ぶ
      • メーカー・ユニット製品の特徴で選ぶ
      • おしゃれなデザインや価格で選ぶ

      施設の利用者層や設置環境に合った製品を選ぶことで、導入後の満足度や維持コストに差が出ます。
      利用条件に適した屋外トイレを選び、費用対効果を高めましょう。

      設置場所で選ぶ

      屋外トイレ製品を選ぶ際、まず確認するべきは「設置場所の条件」です。
      性能が高くても、スペースや搬入経路が合わなければ設置できません。

      以下の項目を事前にチェックしましょう。

      チェック項目 内容
      敷地面積 本体+作業スペースの有無
      地盤 軟弱地盤の有無や地盤調査の要否
      搬入経路 大型車・クレーン搬入の可否
      上下水 下水接続の可否や浄化槽の要否
      周辺環境 景観基準など

      中でもプレハブ型は、搬入経路の確保が大切です。
      安全に設置できるかどうか、導入の際に必ず確認しましょう。

      メーカー・ユニット製品の特徴で選ぶ

      ユニットトイレはメーカーごとに技術力やカスタマイズ性が異なります。
      価格だけで比較せず、長期運用の視点で評価しましょう。

      おもな評価ポイントは以下のとおりです。

      • 耐久性・防水性:特殊加工(土壌微生物膜技術など)の有無、耐用年数
      • バリアフリー:洋式便器、手すり、段差解消など
      • 衛生管理機能:消臭機構、防虫対策など
      • カスタマイズ:サイズ、デザイン、色
      • アフターサービス:部品供給やメンテナンス体制

      中でもバリアフリー対応は、施設の法的責任に関わる大切な事項です。
      高齢者や障がい者、女性、子どもなどが安心して使用できるトイレの実現が、現代の公共施設には求められています。

      参照:e-GOV法令検索「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
      参照:国土交通省「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(令和7年度改正版)

      おしゃれなデザインや価格で選ぶ

      設置環境と機能が固まったら、次はデザインと予算を検討しましょう。

      公園や商業施設では、利用者にとって施設の印象がトイレの見栄えで左右されることもあります。
      景観に調和する外観や素材、照明の工夫が満足度向上に直結します。

      検討のポイントは、以下のとおりです。

      • 外観(周辺景観との調和)
      • 素材(木材・タイル・コンクリートなど)
      • 色のバリエーション
      • 利用者目線の快適設備(照明など)

      複数台導入するなら、割引交渉や分割導入も検討しましょう。
      初期投資のほかに運用費も含め、限られた予算の中で投資対効果を最大化します。

      屋外トイレ設置の費用相場

      屋外トイレの予算を考える際は、購入費だけでなく、長期的にかかる費用まで含めた全体計画が大切です。
      下記の2つの費用区分から、より現実的な予算立案ができます。

      • 初期設置費用
      • 運用・維持費用

      それぞれの内訳を確認しておきましょう。

      初期設置費用

      仮設トイレ自体は、比較的安価に導入できます。
      プレハブ型や水洗式などは、規模や性能によって工事費や申請費が必要となり、設置費用は上がる傾向です。

      屋外トイレ設置のおもな費用項目は、以下のとおりです。

      • トイレ本体費用
      • 基礎・配管工事
      • 地盤調査・改良(必要に応じて)
      • 建築確認申請手数料
      • 設計・構造計算書
      • 上下水接続工事(水洗)
      • 浄化槽設置(下水未整備地域)

      屋外トイレの初期費用は、選ぶトイレの種類と設置方法によって大きく変わります。
      正確な費用は、敷地調査に基づいて見積もりましょう。

      概算見積もりだけで判断するのではなく、敷地の詳しい情報を共有し、正確な見積もりを取ることがポイントです。
      後々の追加工事発生を防ぐため、事前に入念な打ち合わせも行うとよいでしょう。

      運用・維持費用

      トイレ設置後は、定期清掃や消耗品交換、汲み取りなどの運用コストが継続的に発生します。
      中でも汲み取り式トイレの場合はバキューム車による定期処理が必須であり、運用コストがかさみやすい点に注意が必要です。

      屋外トイレの運用・維持費の内訳は、以下のとおりです。

      • 定期清掃・点検
      • 消臭剤・洗剤など消耗品
      • 汲み取り処理
      • 便器・配管の修繕
      • 浄化槽管理

      災害時は利用者層が増え、清掃頻度や消耗品量が大きく変動します。
      内閣府ガイドラインでも、女性や障がい者への配慮、防犯、衛生確保が示されています。

      平時から運用コストを把握し、継続可能な予算を確保しましょう
      専門業者への事前相談も、計画整備に必要です。

      参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン

      屋外トイレ設置の注意点

      屋外トイレは設置場所や費用計画だけでなく、施工から運用開始まで、注意すべきポイントが多くあります。
      計画倒れを防ぐため、次の3ステップを押さえましょう。

      • 設置前に調査・計画を入念に行う
      • 関係者調整と必要な許認可を取得する
      • 施工~運用の全体工程を把握する

      順序立てた確認作業が大切です。

      設置前に調査・計画を入念に行う

      トイレ設置に失敗する原因の多くは、事前計画の不備です。
      設置前には敷地測量や地盤調査を確実に行い、追加工事や予算超過を防ぎましょう。

      設置前の調査項目と費用目安は、以下のとおりです。

      • 敷地測量:5~20万円
      • 地盤調査:10~30万円
      • 既設建物確認:数万円
      • 上下水環境調査:数万円
      • 法的規制確認:無料~数万円

      とくに軟弱地盤では地盤調査を省略すると、建設後の安全性を脅かす可能性があります。
      既存トイレがある場合は、新設トイレとの間で機能重複や不足がないよう、全体を俯瞰した計画を立てることがポイントです。

      参照:環境省「第3部 施設別技術指針 第5章 公衆便所(自然地域トイレ含む)

      関係者調整と必要な許認可を取得する

      トイレ設置には、施設管理者だけでなく、関係各所との調整が必須です。
      事前に協定や許認可を整え、スムーズな運用を目指しましょう。

      調整対象と内容は、以下のとおりです。

      • 建築部局:建築確認申請
      • 下水道部局:接続工事、排水ルール
      • 保健部局:衛生基準、水質管理
      • 防災部局:災害時の活用方針
      • 汲み取り業者:処理能力、回収頻度、費用
      • 浄化槽メーカー:維持管理体制

      なお、施設が大規模な避難所となる可能性がある場合は、多くのケースであらかじめ市町村との協定を結んでおく必要があります。
      災害時の対応がスムーズになります。

      内閣府ガイドライン記載の「災害時における仮設簡易トイレの設置協力に関する協定書(案)」を参考にするとよいでしょう。

      参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン

      施工~運用の全体工程を把握する

      トイレの施工〜運用開始まで、竣工後検査や衛生管理などの各段階で確実な工程管理を行うことで、安全と満足度につながります。
      運用段階での失敗を防ぐため、施工前に細かい進捗管理ルールを決めておきましょう。

      施工から運用開始までの一般的なプロセスは、以下のとおりです。

      1. 設計・申請:基本設計、許認可取得
      2. 施工準備:測量、業者選定
      3. 工事施工:基礎・本体設置
      4. 竣工検査:完成確認、不具合チェック
      5. 運用開始:清掃、衛生管理、利用開始

      運用後は、日々の清掃と月1回以上の点検が必須です。
      トイレの劣化や不具合を早く発見できれば、故障も防げて利用者満足度も維持できます。

      災害時活用を考える場合、平時から訓練やマニュアル整備も管理ルールに盛り込みましょう。

      防災トイレについて詳しく知りたい方はこちら

      まとめ:屋外トイレ設置基準で最適な環境作りを始めよう

      屋外トイレの設置基準は、利用者の安全と尊厳を守る大切な指標です。
      法的基準や工法選定、費用計画を正確に進めて、平時も災害時も安心して使える屋外トイレ環境を作りましょう。

      設置を検討中であれば、まずは敷地の詳しい情報を整理し、複数のメーカーから提案を受けることがおすすめです。

      H.O.C株式会社は、建築基準法に基づき設計・施工、運用管理まで、トイレ設置のすべてのフェーズをサポート。
      コストと機能性を備えたパークトイレから、ユニット式で柔軟性が高いフレームトイレまで、お客様の多様なニーズにお応えします。

      屋外トイレの設置や防災対策のご相談は、専用フォームからお気軽にお問い合わせください。

      この記事の監修者

      西岡 良祐

      H.O.C株式会社 福岡営業本部 主任