COLUMN
コラム
屋外トイレを設置する際、下水道が通っていない場所では「排水をどう処理するか」が最初の課題になります。
浄化槽付きの屋外トイレなら、問題を解決可能です。
本記事では、浄化槽付きトイレの仕組みから導入費用、使用上のメリット・デメリットを解説します。
維持費用や管理のポイントまで、担当者が判断に使える実用的な情報を整理しました。
工事現場や公園、イベントスペースなどでトイレ設備を検討している方は、最後までご覧ください。
浄化槽付き屋外トイレとは
浄化槽付き屋外トイレは、下水道が整備されていない地域において排水処理に役立ちます。
水洗トイレに比べて少量の水で排せつ物を処理でき、屋外トイレに選ばれやすいのが特徴です。
以下では、浄化槽付き屋外トイレの基本を解説します。
- 水がなくても稼働するトイレ処理システム
- 屋外トイレに浄化槽が選ばれる理由
順に見ていきましょう。
水がなくても稼働するトイレ処理システム
浄化槽付きトイレは、汚水を微生物が分解する仕組みです。
汲み取り式トイレと違って下水道につなぐ必要がなく、現場で排水処理を完結できます。
【処理フロー】
- 便器:汚水が流入
- 浄化槽:微生物が汚水を分解
- 処理水:環境に還元される
処理後の水は環境に還元されるため、汲み取りの手間もかかりません。
そのため、電気や水道がない場所でも安心です。
下水道が未整備の地域や、離島でも設置できます。
災害時でも、安定して使える点が強みです。
ただし、微生物を活動させるため、ブロワー(送風機)を24時間稼働する必要があり、最小限の電力は必要になります。
屋外トイレに浄化槽が選ばれる理由
屋外トイレに浄化槽が選ばれる理由は、下水道がない場所でも快適に使えるためです。
工事現場・公園・キャンプ場・観光地などでは、下水道が整っていないケースも珍しくありません。
浄化槽付きトイレが選ばれるポイントは、次のとおりです。
- 独立性:下水道に頼らずどこでも設置可能
- 衛生性: 微生物処理で臭いが少なく快適に使える
- 経済性: 長期利用でランニングコストが抑えられる
- 自由度: 設置場所に制限が少ない
- 柔軟性: 購入・レンタルどちらにも対応
浄化槽付き屋外トイレは、汲み取り式や下水道接続式より幅広い環境で活用できます。
災害時の応急的なトイレとしても便利です。
屋外仮設トイレの種類
屋外仮設トイレは浄化槽式だけではありません。
下水道の有無、設置期間、予算などの条件によって、最適な種類があります。
- 汲み取り式トイレ
- 下水道接続式トイレ
- 浄化槽式トイレ
- 循環式水洗トイレ
4種類の屋外トイレの特徴・違いを比較し、浄化槽式がどのような位置付けにあるかを知りましょう。
1. 汲み取り式トイレ
汲み取り式トイレはいわゆる「ボットン便所」と呼ばれるトイレで、便槽(べんそう)に直接排泄物が落ちる仕組みです。
特徴は以下のとおりです。
- 水道・下水道がなくても設置できる
- 設置コストが安い
- 定期的にバキュームカーで汲み取りが必要
下水道や水道が整備されていない地域でも設置でき、初期投資も少ないため、緊急時の仮設トイレとしてもよく用いられます。
ただし、便槽がいっぱいになると使用できなくなるため、定期的な汲み取り作業が欠かせません。臭いや衛生面の課題もあり、簡易水洗タイプでも、臭いを完全には解消できない点がデメリットといえます。
2. 下水道接続式トイレ
下水道接続式トイレは、公共下水道に直接つながる水洗トイレです。
都市部や郊外で広く使われます。
利用者にとっては快適で清潔、施設管理者にとっても維持管理の手間の少なさが特徴です。
おもなメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|
|
下水道接続式トイレは、処理区域に編入された場合に、地域によっては3年以内の接続が法令で義務付けられています。
設置の柔軟性はやや制限されるでしょう。
参照:「下水道法(抜粋)」
3. 浄化槽式トイレ
浄化槽式トイレは、敷地内に埋め込んだ処理装置で汚水を浄化する方式です。
おもなメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|
|
下水道が整備されていない地域でも、水洗トイレを使えるのが大きな強みです。
参照:「下水道法(抜粋)」
4. 循環式水洗トイレ
循環式水洗トイレは、床下の処理水槽で水を循環させ、便器を洗浄する方式です。
水洗トイレの快適さを保ちながら、水の消費量を大幅に抑えられます。
初期水注入後は追加補給が不要で、節水効果が期待できます。
おもなメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|
|
快適に使える一方で、使用回数が多かったり、メンテナンスが不十分だったりすると、水中の雑菌が蓄積しやすくなることも。
循環する水の清潔性維持が課題になる可能性もあります。
浄化槽の汚水処理の仕組み
浄化槽付きトイレを選ぶ場合、処理の仕組みを知っておくと施設管理に役立ちます。
ポイントは次のとおりです。
- 浄化槽内の処理プロセス
- 処理水の再利用方法
微生物がどのように汚水を処理するのか、処理後の水がどのように活用されるのかを知り、長期運用に役立てましょう。
浄化槽内の処理プロセス
浄化槽内では、複数の段階を経て汚水が浄化されます。
具体的な処理プロセスは、以下のとおりです。

浄化槽内では、環境下に生息する微生物がし尿や有機物の大部分を
分解し、一般的な土壌と同じ環境が再現されています。
目安として処理は約3〜7日かかり、汚泥は沈殿層に蓄積されます。
そのため、定期的に清掃して取り除く作業が必要です。
ブロワーによる継続曝気によって、微生物の働きを維持する役割があります。
処理の流れを押さえると、メンテナンスの大切さも理解しやすくなるでしょう。
処理水の再利用方法
浄化槽で処理された水は、臭いがほとんどありません。
再利用可能な設計を採用すれば、さまざまな用途に再利用できます。
【処理水の活用例】
- トイレ洗浄水:循環型システムでトイレの洗浄に再利用
- 植栽への散水:公園や施設の緑地維持に活用
- 清掃用水:施設内の清掃に使用
- 雨水貯水システム併用:雨水と組み合わせ給水量を最小化
雨水貯水システムと併用すると外部給水が不要となり、自給循環が実現します。
処理水再利用によって断水時でも屋外トイレが使え、災害時の機能維持にも役立つ点が大きな強みです。
▼避難所トイレについて詳しく知りたい方はこちら
避難所のトイレ問題の解決策は?能登半島地震から学ぶ初動対応
仮設トイレ設置・運用にかかる費用
屋外トイレを導入する際は、初期投資だけでなく、年間のランニングコストや長期的な累積費用まで含めて検討しましょう。
中でも浄化槽付きトイレは、レンタルか購入かで費用が異なるため、注意が必要です。
- 浄化槽購入の初期費用
- 浄化槽のレンタル料金
- 下水道接続工事費用
- 浄化槽の維持・メンテナンス費用
費用構造を把握し、費用対効果の高い仮設トイレを選びましょう。
浄化槽購入の初期費用
浄化槽付きトイレの導入には、本体費用と設置工事費が必要です。
処理能力に応じて価格が変わります。
【設置費用の目安(本体+工事費)】
| 槽の大きさ | 費用 | ||
| 5人槽 | 80~120万円 | ||
| 7人槽 | 100~140万円 | ||
| 10人槽 | 120~150万円 | ||
【5人槽の費用内訳例】
| 項目 | 費用 | ||
| 本体 | 40~60万円 | ||
| 工事費 | 40~55万円 | ||
| 合計 | 80~120万円 | ||
サイズや追加費用は、延床面積や設置場所のインフラによる条件、1日に何回処理が必要かによっても変わります。
1日40〜50回処理タイプでは高額費用が必要なケースも。
見積もり条件によって大きく変動するため、注意が必要です。
浄化槽のレンタル料金
浄化槽付きトイレは購入だけでなくレンタルも可能で、短期設置や試用に便利です。
【レンタル料金例】
| 業者 | 月額料金 |
|---|---|
| A | 6万5,000円(税抜) |
| B | 要問い合わせ |
| C | 要問い合わせ |
長期利用では、割引が適用される場合もあります。
レンタルにはおもに以下の基本サービスが含まれます。
- トイレ本体の設置・撤去
- 定期清掃
- 故障対応
- 使用後の処分
短期運用や、導入テストには手間が少なく経済的といえるでしょう。
購入とレンタルを比較した場合、長期使用なら購入が有利になるケースがあります。
具体的見積もり条件で、判断する必要があるでしょう。
レンタル会社は地域や期間によって料金が異なります。
全国的に複数社があり、期間に応じて変動するのが一般的です。
下水道接続工事費用
下水道が引き込まれている地域でトイレを設置する場合、配管工事費がかかります。
既存配管を利用する・新たに配管を設置する場合も、数十万円〜十数万円が必要です。
下水道接続工事には、一般的に以下が含まれます。
- 既存配管との接続工事
- 新規配管の敷設(必要な場合)
- 下水道本管との接続工事
- 受益者負担金(自治体によって異なる)
価格は、以下の条件でも変動します。
- 既存配管との距離
- 地盤の状態
- 地域の下水道料金体系
工事費用は設置場所の条件によって大きく変動するため、複数業者からの見積もりを取りましょう。
事前に専門家による現地調査依頼がおすすめです。
浄化槽の維持・メンテナンス費用
浄化槽は、定期メンテナンスが法的に義務付けられています。
年間費用は数万円が目安で、浄化槽のサイズや地域、メンテナンス業者の料金体系によって変動します。
定期清掃時には、以下がチェックされます。
- 汚泥の蓄積量
- 浮遊物の量
- 配管の状態(詰まりや破損がないか)
- ブロワー動作(音や振動)
- 異臭の有無
浄化槽の維持費用の内訳は、以下のとおりです。
- ブロワー(送風機)の24時間稼働に伴う電気代
- 微生物製剤の定期購入(循環式の場合、必要になる可能性あり)
- 故障や修理時の部品交換費用
なお、定期点検や清掃については記録が必要です。
清掃日・業者名・異常の有無・薬剤投入などを記入し、5年以上保存します。
参照:e-GOV法令検索「浄化槽法」
浄化槽付き仮設トイレの5大メリット
浄化槽付きトイレの魅力は、排水を処理できるだけではありません。
おもなメリットは以下のとおりです。
- 下水道なしで自立稼働する
- 臭わず衛生的に使える
- 長期運用で費用を抑えられる
- 場所を選ばず自由に設置可能
- 短期・長期まで柔軟に運用可能
日常の運用や管理にどのように役立つかを見ていきましょう。
1. 下水道なしで自立稼働する
浄化槽付きトイレ最大のメリットは、下水道に頼らず、決められた敷地内で汚水処理が完結できることです。
下水道が整備されていない山間部や離島、工事現場などでも、水洗トイレを設置できます。
実務的なメリットは、以下のとおりです。
- 下水道引き込み工事費(数百万円)を削減できる
- 立地選択の自由度アップにつながる
インフラに頼らない自立稼働によって、災害時も復旧が早くなります。
太陽光発電を活用すれば、停電時でも安心です。
2. 臭わず衛生的に使える
汲み取り式に比べ、浄化槽式は微生物が「し尿」を分解するため、臭いを大幅に抑えられます。
管理不備やメンテ怠慢がなく、管理が徹底されていれば快適に利用でき、周囲への臭気被害も気にせずに済むでしょう。
浄化槽式は衛生的で、女性や高齢者も使いやすい点が魅力です。
快適性の高いトイレは、公園やイベント会場での利用者満足度にも直結します。
3.長期運用で費用を抑えられる
浄化槽付き仮設トイレは初期投資高めですが、ランニングコストが低く、長期運用では経済的といえます。
以下に、比較ポイントをまとめました。
| 方式 | おもな費用 | ポイント |
| 下水道接続式 | 月々の下水道使用料 | 定期料金が発生 |
| 浄化槽式 | 年1回の清掃費用 | 汚水処理は自立 |
| 汲み取り式 | 汲み取り費用 | 頻度増で年間費用上昇 |
汲み取り式の場合、便槽が満杯に達するまでの期間が短いこともしばしば。
汲み取り頻度が増え、年間費用が増加する可能性があります。
以下の場合であれば、浄化槽式が有利です。
- 下水道未整備の地域
- 10年以上の長期運用
- 汲み取り頻度が多い施設
費用は地域や規模、補助金で変動するため、現地調査と見積もりで最適な方式を選びましょう。
4. 場所を選ばず自由に設置可能
浄化槽式は、既存のインフラに左右されない自由度があります。
山間部、谷間、狭小地など、ほかの方式では設置困難な場所でも対応可能です。
水源が遠い場所や道路から離れた立地でも設置しやすく、移設も柔軟に行えます。
中でも公園の拡張工事や、イベント会場の臨時施設は設置の自由度が重要です。
下水道接続式では工事の制約が多い一方で、浄化槽式ならより簡単に設置できるケースが増えるのです。
5. 短期・長期まで柔軟に運用可能
浄化槽付き仮設トイレは、購入とレンタルの両方が選べます。
施設の状況に合わせた運用が可能です。
想定する利用期間に基づき、購入とレンタルのどちらが有利か検討しましょう。
判断の目安は、以下のとおりです。
- 短期(数ヶ月): レンタルで対応、設置・撤去を業者に依頼
- 中期(1~4年): 購入とレンタルの費用比較で判断
- 長期(5年以上): 購入が経済的
最初はレンタルで試し、段階的に購入へ切り替えることも可能です。
施設の状況や変化に合わせて対応しましょう。
ただし、レンタルや設計条件によって「設置の柔軟性」に差が出るケースも考えられます。
導入の際は、用途を明確にして設計する必要があります。
浄化槽付き仮設トイレのデメリット
メリットの多い浄化槽付きトイレですが、導入前にデメリットも把握しておきましょう。
以下では、浄化槽式を導入する際の課題を3つ解説します。
- 初期投資費用が高い
- 定期メンテナンスが必須
- 設置場所と搬入経路が限定される
デメリットへの対処法も、あわせて確認しましょう。
初期投資費用が高い
浄化槽付きトイレの最大のデメリットは、初期投資が高額になる点です。
初期投資が高くなるおもな理由には、以下があげられます。
- 複雑な処理システムの構築
- 基礎・埋め込み工事の手間
- 各種の許認可取得費用
- 試運転・検査費用
高い初期投資により、採算性が見えるまでに一定期間の運用が必要です。
短期利用では、費用を回収できないケースもあり得るでしょう。
浄化槽式は、長期運用を想定した施設での導入が適しています。
利用者で費用を分担したり、公的補助金を活用したりしましょう。
定期メンテナンスが必須
浄化槽式は、浄化槽法に定められた定期メンテナンスが必要です。
| 浄化槽管理者は、環境省令で定めるところにより、毎年一回(環境省令で定める浄化槽については、環境省令で定める回数)、指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければならない。
引用:e-GOV法令検索「浄化槽法」 |
メンテナンスを怠ると、処理能力の低下や環境汚染につながります。
法令遵守と機能維持のため、担当者は次の必須項目を把握しておくことが重要です。
- 定期清掃:年1回(法律で義務付け)
- 法定点検:年1回(自治体への報告義務)
- 保守点検:年3回~毎月(機種による)
- ブロワー:24時間稼働(電気代が継続発生)
しかし、上記すべてを担当者が管理しなければならない状況では、負担や漏れのリスクも高まります。
対処法は、以下がおすすめです。
- 専門業者との契約
- メンテナンス記録の管理
- 管理責任者の明確化
徹底した定期メンテナンスが、浄化槽の安全・安定運用の基本といえます。
設置場所と搬入経路が限定される
浄化槽は大型で重い装置です。
以下のような条件では、設置が難しい場合もあるでしょう。
- 大型トラックが進入できない狭い道路・急斜面
- 不安定な地盤
- 掘削工事が困難な場所
設置工事が割高になるだけでなく、設置不可能な場合もあるため、以下の対策を行うことがポイントです。
- 専門家による事前現地調査
- 小型機種の検討
- 搬入経路の確保(仮設道路の整備など)
とくに山間部などでの設置する際は、搬入経路の事前確認が必要です。
浄化槽付き仮設トイレの選び方
浄化槽付きトイレを導入する場合、いくつかのポイントを押さえて総合的に判断しましょう。
以下では、選ぶ際の4つの判断軸を解説します。
- 利用期間と設置環境から選ぶ
- 設置場所の条件から選ぶ
- 処理能力と利用人数で選ぶ
- 予算と初期投資で選ぶ
順に見ていきましょう。
利用期間と設置環境から選ぶ
浄化槽付き仮設トイレは購入とレンタルの両方で対応できるため、利用期間で選び方が変わります。
ただし、費用だけでなく管理責任の観点からも判断が必要です。
以下に、短期〜長期利用までのトイレ運用方法の特徴をまとめました。
| 利用期間 | 運用方法 | メリット |
| 短期利用(~1年) | レンタル |
|
| 中期利用(1~5年) | 購入またはレンタル | 施設の継続性が不確実な段階は、リスク回避でレンタルも選べる |
| 長期利用(5年以上) |
|
|
また、設置環境によっても、選べる浄化槽の機種が変わります。
- 都市部か地方か
- インフラの整備状況はどうか
下水道が来る予定のある地域なら当面はレンタルで対応し、のちに購入するといった段階的アプローチも有効です。
設置場所の条件から選ぶ
浄化槽式トイレを設置できるかどうかは、現場の地形や交通条件などの設置場所によっても大きく左右されます。
とくに、搬入経路と地盤の状態は、機種選びや総工事費に直接つながる要素のため、十分な検討が必要です。
以下にポイントをまとめました。
| 設置環境 | 搬入・設置のポイント | 推奨機種タイプ | 設置時の注意事項 |
| 都市部・交通アクセスのよい場所 | 大型トラックやクレーンが使える | 処理能力の高い大型機種 | 道路から近いと配管工事がしやすく、コスト削減につながる |
| 山間部・地方の施設 | 搬入経路が狭く限定的 | 小~中型機種 |
|
| 狭小地・既存施設との共存 | スペース制約が厳しい | コンパクト設計機種 |
|
地形図やハザードマップで事前確認すると、のちのトラブル防止になります。
処理能力と利用人数で選ぶ
浄化槽の処理能力は、1日の想定利用人数と使用回数で決まります。
目安は以下のとおりです。
| 利用人数 | 1日使用回数 | 推奨タイプ | 価格目安 |
| 10~20人 | 20~30回 | 小型 | 150~200万円 |
| 20~50人 | 40~50回 | 標準 | 数百万円 |
| 50~100人 | 100~150回 | 大型 | 数百万円以上 |
処理能力を過小評価すると、すぐに処理能力が限界に達し、臭いや衛生問題が発生します。
反対に過大評価は無駄な投資になるでしょう。
利用人数と使用回数は余裕を持って算出することがポイントです。
イベント会場の場合は、最大来場者数を基準に選ぶと安心でしょう。
予算と初期投資で選ぶ
予算の制約がある場合は、予算に応じて柔軟に選びましょう。
以下に、判断の目安を示しました。
- 予算150万円以下の場合:汲み取り式か浄化槽のレンタルを検討
- 予算300~400万円の場合:標準的な浄化槽を購入
- 予算500万円以上の場合:大型機種の購入も可
予算が少ない場合は、レンタルの検討がおすすめです。
一方、予算が多く取れる場合は、複数施設の一括整備も検討できます。
見積もりや補助金、運用費も含めて総合的に判断しましょう。
自治体の公的補助金や助成金の活用も視野に入れましょう。
自治体によっては、浄化槽導入に対する補助制度を用意している場合もあり、活用するとコスト軽減につながります。
屋外トイレ設置前に確認すべき基準
浄化槽付き屋外トイレを導入する際は、設置前に行政手続きや基準を確認しましょう。
公共施設と工事現場では適用される基準が違う場合もあり、確認を怠るとトラブルの原因になります。
確認すべきポイントはおもに3つです。
- 公共施設での設置基準
- 工事現場での設置基準
- 自治体への許可申請
条件をクリアしておくと、導入がスムーズに進みます。
公共施設での設置基準
公園や観光施設などの公共施設に浄化槽式トイレを設置するケースでは、内閣府のガイドラインに沿う必要があります。
ガイドラインのおもなポイントは、以下のとおりです。
- 利用者の数に対応した処理能力の確保
- 一定の衛生水準の維持
- バリアフリー対応(車いす利用者)
- 女性・高齢者への配慮
- 緊急時でも機能する設備(太陽光発電・非常用電源)
中でも災害時の避難所となり得る施設では、停電時でも機能するトイレが求められます。
太陽光発電との組み合わせや、非常用電源の確保も大切です。
設置場所の選定にも基準があり、利用者の動線やプライバシー確保も考慮が必要です。
自治体や設置場所によってはガイドラインが異なる可能性もあるため、自治体に事前に確認しましょう。
参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」
▼公共トイレについて詳しく知りたい方はこちら
避難所の女性向けトイレ対策|災害時に必要な備えと指針
工事現場での設置基準
国土交通省では、建設現場に設置する仮設トイレに「快適トイレ」と呼ばれる標準仕様を定めており、以下の基準を満たす必要があります。
【必ず備えるべき機能】
- 洋式便座、水洗・処理装置付き
- 臭い逆流防止機能(フラッパー)
- 二重ロック・照明・荷物フック付き
【必ず付属させるべき設備】
- 男女別表示、目隠し
- サニタリーボックス(女性用)
- 鏡付き洗面台・衛生用品
【推奨仕様】
- 室内寸法900×900mm以上
- 擬音装置、フィッティングボード
- 温度調整、トイレットペーパー置き場
工事現場では工期が限られているため、必要な期間だけ使えるレンタル設置が一般的です。
労働基準監督署への届出が必要になる場合もあるため、施工前に所轄の監督署に相談すると安心でしょう。
参照:国土交通省「建設現場に設置する「快適トイレ」の標準仕様決定」
自治体への許可申請
浄化槽を設置する際は、必ず自治体への届出が必要になります。
建物の工事を伴うかどうかで手続きが変わるため、早めに確認することがポイントです。
【おもな申請書類/建築確認申請あり】
- 浄化槽調書(正本・副本・通知用の計3部)
- 浄化槽処理水の放流経路・放流先を示した見取り図
- 浄化槽配置図・敷地内排水経路図
- 処理対象人員算定書
- 認定書の写し
【おもな申請書類/建築確認申請なし】
- 浄化槽設置届出書(浄化槽法第5条に基づくもの)
提出先は、都道府県・特別区・保健所設置市のいずれかになります。
それぞれの自治体で様式・要件が異なるため、事前に担当窓口へ相談するとスムーズに進むでしょう。
参照:環境省「浄化槽法に関する手続」
引用:e-GOV法令検索「浄化槽法」
浄化槽付き仮設トイレ|維持管理のコツ
浄化槽式トイレを長く安心して使うには、日ごろの維持管理が大切です。
運用トラブルを防ぐため、最低限押さえておきたいポイントを以下にまとめました。
- 定期点検と清掃を実施する
- メンテナンス記録を管理する
1つずつ解説します。
定期点検と清掃を実施する
浄化槽の処理能力を長く安全に維持するには、定期的に点検し、清掃を欠かさないことが大切です。
「浄化槽法」にも定められているため、点検と清掃を怠ると自治体への報告義務違反になります。
以下は、定期点検と清掃の目安です。
処理方式・人員数により回数は異なります。
| 項目 | 頻度(目安) | 点検・清掃内容 |
| 定期清掃 | 年1回 | 汚泥や浮遊物の除去 |
| 法定点検 | 年1回 | 機能や性能の検査 |
| 保守点検 | 年3回~毎月 | 日常的な機能 |
定期清掃を専門業者に専門業者に継続して依頼すると、施設の状態を一貫して把握でき、トラブル予防にもつながります。
参照:環境省「浄化槽の保守点検、清掃等について」
メンテナンス記録を管理する
定期点検や清掃の記録は、浄化槽の健全性を判断する際に必要な資料です。
整理しておくことで、早い段階で異変に気付けます。
記録すべき項目は、以下のとおりです。
- 清掃実施日・業者名
- 汚泥排出量
- 点検時の異常の有無
- 故障・修理の内容
- 薬剤投入の履歴
- 水温・pHなどの検査結果
上記の記録は、一定期間の保存が義務づけられています。
管理方法は紙台帳とデジタルのどちらも認められていますが、運営規模に合わせて選ぶと管理が楽になるでしょう。
記録を見返すと、汚泥の増えるペースが早いなど、隠れたトラブルのサインが見つかることも。
早めに気付くことで、適切な対策を取れます。
屋外トイレに関するよくある質問(FAQ)
浄化槽式トイレの導入でよくある質問を2つ厳選しました。
- Q. 仮設トイレの設置費用はいくらくらいが相場?
- Q.仮設トイレの汲み取り費用はどれくらい?
予算計画の立案に役立ててください。
Q. 仮設トイレの設置費用はいくらくらいが相場?
設置費用は、トイレの方式によって方式によって大きく変わります。
購入時の費用目安は以下のとおりです。
| 方式 | 合計(本体価格+工事費) |
| 汲み取り式 | 60万円前後 |
| 下水道接続式 | 60万円前後 |
| 浄化槽式(5人槽) | 80万円前後 |
なお、地形や搬入経路・既存インフラで費用は変わります。
中でも、浄化槽式は地盤調査を含む追加工事発生の可能性があります。
複数業者から見積もりを取り、詳細を確認しましょう。
Q. 仮設トイレの汲み取り費用はどれくらい?
汲み取り式トイレを運用する場合、定期的な汲み取り費用が発生します。
汲み取り費用の目安は、以下のとおりです。
| 項目 | 月1回汲み取り | 月2回汲み取り |
| 1回あたり | 約4,000〜1万円 | 8,000~2万円 |
| 月額費用 | 約4,000〜1万円 | 8,000~2万円 |
| 年間費用 | 4万8,000~12万円 | 9万6,000~24万円 |
| 20年累積費用 | 約96~240万円 | 約116~480万円 |
費用は地域や便槽サイズ、使用人数で変動します。
浄化槽式の初期投資が高く見えるのは、こうした継続的なコストを避けるための投資でもあるのです。
まとめ:浄化槽付きトイレで最適な環境を実現しましょう
浄化槽付き屋外トイレは、衛生環境や利用者満足度につながります。
下水道が整備されていない地域において、浄化槽式トイレは実用的かつ経済面でも優れているのが魅力です。
H.O.C株式会社では、パブリックトイレの設計・施工から維持管理まで、トータルソリューションを提供しています。
サイコロトイレ・パークトイレ・パネルトイレなど、設置環境に応じた多様な製品ラインアップで、お客様のニーズに対応いたします。
浄化槽式トイレの導入を検討される際は、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
西岡 良祐
H.O.C株式会社 福岡営業本部 主任
