COLUMN
コラム
工場の敷地内や事業所の屋外にユニットトイレを増設したいと考えているものの、建築確認申請の手続きが必要なのか分からずお困りではありませんか?
安易に設置してしまうと、後から違法建築として指摘され、撤去や是正を求められるリスクがあるため注意が必要です。
本記事では、ユニットトイレの導入で申請が必須となる4つのケースや、例外的に不要となる条件を解説します。
トラブルのない安全な導入計画を進めるために、参考にしてください。
ユニットトイレで確認申請が必要となる4つのケース
屋外に設置するユニットトイレは、土地に定着する工作物として原則的に建築確認申請の対象となりますが、状況によって判断が分かれます。
確認申請が必要となる、4つのケースは以下のとおりです。
- 床面積が10㎡を超える場合
- 防火地域または準防火地域への設置
- 都市計画区域内の更地への設置
- 屋内的用途に供される場合
それぞれ見ていきましょう。
参考資料:2通達/通知/技術的助編-兵庫県
参考資料:国土交通省「P12便所等の基準に係る見直し検討」
床面積が10㎡を超える場合
建築基準法では、床面積が10㎡を超える建物を増築する際に確認申請が義務付けられており、これはユニットトイレにも適用される重要なルールです。
多くのユニットトイレはコンパクトに設計されていますが、多機能な大型製品や複数の個室を連結したタイプでは、規定の面積を超過してしまうケースが少なくありません。
カタログ上の数値だけでなく、実際の設置面積を含めて慎重に計測し、わずかでも基準を超える場合は必ず正規の手続きを行ってください。
面積オーバーを見落とすと、即座に法令違反となるため注意が必要です。
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防火地域または準防火地域への設置
都市計画法に基づいて指定された「防火地域」及び「準防火地域」内に設置する場合は、建物の規模や面積に関係なくすべての建築物で確認申請が必須です。
たとえ1㎡程度の小さなトイレであっても、このエリア内では火災時の延焼防止を目的とした厳しい規制が適用されるため、10㎡以下の免除規定は一切適用されません。
駅前や繁華街、幹線道路沿いなどは、これらの地域に指定されている可能性が高いです。
そのため、自治体の窓口やWebサイトで最新の都市計画図を確認し、設置場所の法的規制を事前に把握しましょう。
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都市計画区域内の更地への設置
敷地内に他の建物が存在せず、更地にユニットトイレを単体で設置する場合は「新築」扱いとなり、10㎡以下の確認申請免除の特例を受けられません。
建築基準法における免除規定は、あくまで既存建築物がある敷地内での「増築・改築・移転」に限られるため、更地への設置は原則どおり申請が必要です。
駐車場や資材置き場など、建物がない場所にトイレだけを導入しようとするケースでは、この条件に該当して手続きが必要になることが多いです。
そのため、計画段階での確認が欠かせません。
屋内的用途に供される場合
ユニットトイレが屋根と柱、壁を有し、給排水設備や電気設備を接続して継続的に使用できる状態であれば、単なる仮設物ではなく建築物として扱われます。
土地に定着させて屋内的用途に供する施設は、居住性や衛生環境を確保するために建築基準法の規制対象となり、適切な手続きを経て設置しなければなりません。
「置くだけだから大丈夫」という認識で安易に設置すると、建築基準法違反とみなされるリスクが高くなります。
そのため、恒久的な施設として使用する以上は、法に則った申請を行うことが前提となります。
ユニットトイレで確認申請が不要となる条件と例外
原則として申請が必要なユニットトイレですが、特定の条件を満たす場合や特殊な用途においては、法的に手続きが免除されるケースも存在します。
確認申請が不要となる、以下3つのケースを解説します。
- 工事施工のために現場に設ける仮設建築物
- 防火・準防火地域外での増築・改築・移転で床面積が10㎡以内
- 基礎に定着せず随時かつ任意に移動可能な構造物
詳しく見ていきましょう。
工事施工のために現場に設ける仮設建築物
建設現場や土木工事の現場に設置される仮設トイレは、工事期間中のみ限定的に使用される施設として、確認申請が不要になる特例措置が認められています。
建築基準法第85条に基づき、工事完了後に撤去することが前提であれば、一時的な仮設建築物として簡易な手続きや届け出だけで設置が可能となる場合があります。
ただし、設置が認められるのはあくまで「工事の施工期間中」に限られており、工事終了後もそのまま残して使い続けることは認められません。
そのため、あくまで期間を定めた一時的な利用に限られる点を理解しておきましょう。
防火・準防火地域外での増築・改築・移転で床面積が10㎡以内
実務上で確認申請が不要となるもっとも一般的なケースは、防火地域及び準防火地域以外のエリアにおいて、10㎡以下のユニットトイレを増築する場合です。
すでに建物がある敷地内への設置であり、かつ法的な規制が緩やかな地域であれば、小規模な建築物として確認申請の手続きを省略することが認められています。
多くの既製品はこの条件に収まるサイズで製造されていますが、設置場所が指定地域外であることを確実に見極めなければいけません。
自己判断せず、自治体への確認を行うことがトラブル回避のために重要です。
基礎に定着せず随時かつ任意に移動可能な構造物
土地への定着性がない工作物は建築基準法の対象外となるため、基礎に固定せず、いつでも任意の場所に移動できる構造であれば確認申請は不要です。
たとえば、工具を使わずに取り外せる配管接続や、車輪が付いていて牽引できるトレーラーハウス型のトイレなどが、この条件に該当する可能性があります。
しかし、一般的なユニットトイレは安全確保のためにアンカーで基礎に固定し、ライフラインを埋設接続するのが通常です。
そのため、行政庁によっては定着物とみなされる可能性が高く、個別の判断を要します。
ユニットトイレ導入前に確認すべき敷地条件リスト
法令を順守して安全にユニットトイレを設置するためには、製品選びの前に設置予定地の法的条件や物理的状況を詳細に調査しておくことが欠かせません。
ユニットトイレ導入前に確認すべき、以下4つを紹介します。
- 都市計画区域及び用途地域の確認
- 防火地域・準防火地域の指定状況
- 敷地上の既存建物の有無(新築/増築の判断)
- 地盤の状況と基礎構造の検討(重量物の設置に際して)
一つひとつ確認を進め、手戻りのない確実な導入計画を立てましょう。
都市計画区域及び用途地域の確認
設置を予定している場所が都市計画区域内であるか、どの用途地域に区分されているかを調べることは、導入計画において重要な作業です。
市街化調整区域などの開発が制限されているエリアでは、そもそも新たな建築物の設置自体が認められない場合があり、計画そのものを見直す必要が出てきます。
自治体の都市計画課やインターネット上の地図情報サービスを利用すれば、誰でも用途地域を確認できます。
そのため、まずは設置が可能かどうかという根本的な条件をクリアにすることから始めましょう。
防火地域・準防火地域の指定状況
設置場所が防火地域や準防火地域に該当するか否かは、確認申請の要否だけでなく、求められる建物の性能にも大きく影響します。
指定地域内では、延焼を防ぐために外壁や屋根に不燃材料を使用するなどの防火措置が必要となり、標準仕様の製品では対応できないケースも考えられます。
特注対応や高額な防火仕様の製品が必要になることもあるため、コストや納期に直結するこの条件は、契約前の段階で確実に把握しておくべき必須事項です。
敷地上の既存建物の有無(新築/増築の判断)
敷地内にすでに適法な建物が存在しているかどうかを確認し、今回の設置が「増築」になるのか、それとも「新築」扱いになるのかを明確にします。
既存建物がある場合は10㎡以下の免除規定を活用できる可能性がありますが、更地への設置では原則として申請が必要となり、手続きの負担が大きく異なります。
同一敷地内に関連施設がある場合でも、登記上の筆が分かれていると別敷地とみなされて新築扱いになることも。
そのため、敷地の境界や権利関係も含めて正確な状況を把握しましょう。
地盤の状況と基礎構造の検討(重量物の設置に際して)
コンクリート製や鉄骨製のユニットトイレはかなりの重量があるため、設置場所の地盤がその重さに耐えられるかどうかを確認することも大切です。
軟弱な地盤にそのまま設置すると、時間の経過とともに不同沈下が起こり、建物の傾きやドアの開閉不良、配管の破損といった重大なトラブルにつながりかねません。
確認申請の有無に関わらず、建築基準法に適合した堅牢な基礎を設けることは建築主の責任です。
必要に応じて地盤調査を行い、安全性を確保した施工計画を立てなければいけません。
まとめ:ユニットトイレの確認申請は敷地条件で判断を
ユニットトイレの確認申請は、設置場所の法的規制や敷地条件によって判断が分かれるため、専門的な知見に基づいた慎重な検討が必要です。
H.O.C株式会社では、ミニマムデザインの「サイコロトイレ」や機能性の高い「パークトイレ」など、多様なニーズに応えるパブリックトイレを提供しています。
設置環境に合わせた最適な製品選びや導入計画について、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
西岡 良祐
H.O.C株式会社 福岡営業本部 主任
