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屋外トイレを施設に設置する際、どの種類を選べばよいか迷う方も多いでしょう。
屋外トイレには、水洗式や非水洗式、簡易トイレなど、用途や機能に応じたさまざまな種類があります。
通常時の利用に向くもの、災害時の備えとして適したものなど、それぞれ特徴が異なります。
本記事では、通常時と災害時のトイレの種類や選び方、設置費用、導入の際の注意点などを詳しく解説。
施設管理者が最適な屋外トイレを選ぶための知識をお伝えします。
屋外トイレの種類
屋外トイレは、上下水道の有無など施設の立地や、利用者数などの運用条件によって設置すべき種類が異なります。
以下4種類の洗浄方式の特徴・メリットデメリットを知り、施設に合った屋外トイレを選びましょう。
- 水洗トイレ(ユニット型含む)
- 簡易水洗トイレ
- ポンプ式トイレ
- 非水洗トイレ
最適な種類を決めることで屋外トイレの運用効率が高まり、利用者の満足度向上にも期待できます。
水洗トイレ(ユニット型含む)
水洗トイレは家庭用トイレと同じ仕組みで、水道から供給された水で排泄物を流します。
下水道または浄化槽に接続され、処理された水が河川などに放流されます。
工場製造の「ユニット型」と現場施工の「在来工法」があり、工期や費用、デザイン要件に応じて選べる点が特徴です。
おもなメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
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水洗トイレ(ユニット型含む)は、インフラが整備された地域や、清潔さと快適性を優先したい施設に向いています。
簡易水洗トイレ
簡易水洗トイレは、400ml程度の少量の水で排泄物を流し、便槽に一時貯留する方式です。
水道があれば下水道未整備地域でも設置できます。
おもなメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
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簡易水洗トイレは、郊外の施設や下水道未整備の場所に向いています。
定期的なメンテナンスが必要なため、管理体制が整った施設で効率的に運用可能です。
ポンプ式トイレ
ポンプ式トイレは、動力式ポンプを使って水を流し、排泄物を便槽に貯める方式です。
給排水工事が不要な場合が多く、どこにでも設置できる柔軟性が最大の特徴といえます。
おもなメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
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ポンプ式トイレは、イベント会場や工事現場など、期間限定での使用におすすめです。
初期工事の負担が少ないため、迅速な対応が求められるシーンで重宝されます。
非水洗トイレ
非水洗トイレは、いわゆる「ボットントイレ」で、排泄物を便槽に溜めるだけの昔からあるシンプルな方式です。
給排水工事が不要なため、インフラがない場所に設置できます。
おもなメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
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非水洗トイレは山間部や設備が整わない限定的な場所で活用されています。
導入コストが低いため、コスト面優先の場合におすすめの方式です。
災害時トイレの種類
災害時は水洗トイレが使えなくなることも多く、代わりのトイレが必要です。
避難所や防災拠点では、専用の災害対応トイレが配置され、健康や尊厳を守る役割があります。
おもな種類は以下のとおりです。
- 災害レジリエンストイレ
- 携帯トイレや簡易トイレ
- マンホールトイレ
- 仮設トイレ(ユニット型含む)
各タイプの特性を理解し、地域や施設での防災体制を整える参考にしましょう。
災害レジリエンストイレ
災害レジリエンストイレとは、耐災害性を持つ水洗トイレです。
普段使う水洗式トイレのような快適さがあります。
一部自治体ではバリアフリー対応のものや、災害によって水道が断たれても、少量の水で洗浄できる「モード切り替え機能」を備えた製品を導入しています。
高齢者や障がい者、妊婦など要配慮者に優しいのが特徴です。
多くの場合では、避難建物の1階などのアクセスしやすい場所に設置されています。
携帯トイレや簡易トイレ
携帯トイレや簡易トイレは、電気や水道の遮断された発災直後でもすぐ対応できる機動力が特徴です。
携帯トイレは、既存トイレの便座に専用シートを設置して使うタイプです。
一方、簡易トイレは段ボールやプラスチックパーツを組み立てて作ります。
ホームセンターやネット通販で広く販売されているため、個人での備蓄も可能です。
使用済みシートは凝固剤で固めて衛生的に処理できます。
施設では、数日分の備蓄をしておくと安心です。
▼防災トイレについて詳しく知りたい方はこちら
防災トイレ6つのタイプのしくみとトイレ対策が必要な理由を解説
マンホールトイレ
マンホールトイレは、下水道管に直結する流下型のトイレです。
マンホール上に便器やテント型個室を設置し、排泄物は下水道に直接流れる仕組みです。
下水道管路・処理施設が被災していないことを前提とした場合、汲み取り作業は要りません。
昨今では、公園や学校などの指定避難所に事前に整備されているケースが多い傾向にあります。
災害時の準備負担が少ないのが魅力ですが、下水道管や処理施設が被災していないことが前提です。
地域のインフラ状況を確認しておく必要があります。
仮設トイレ(ユニット型含む)
仮設トイレは、イベント会場や工事現場でも見かけることの多い、独立したボックス型のトイレです。
便槽にし尿を貯め、定期的に汲み取って処理します。
国内で広く普及しており、災害時にも比較的調達しやすい点がメリットです。
鍵付き個室や照明が付いている製品も多く、プライバシーと安全性を確保できます。
一方、便槽が満杯になると使用できなくなる点がデメリットです。
災害時には交通網の寸断で汲み取り作業が遅れるリスクもあります。
屋外トイレの選び方
屋外トイレは、施設の目的や利用者の特性、設置環境によって最適な種類が変わります。
初期費用だけでなく、長期的な運用コストや利用者満足度も考慮しましょう。
選ぶ際のポイントは大きく2つです。
- 構造・工法で選ぶ
- おしゃれなデザインや機能性で選ぶ
上記のポイントを押さえることで、施設のよさや価値を高め、利用者からの信頼を獲得できます。
構造・工法で選ぶ
屋外トイレは、「在来工法」と「ユニット工法」の2種類があります。
在来工法
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ユニット工法
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以下の表は、屋外トイレの種類別に工法を整理したものです。
| トイレの種類 | 工法分類 | 備考 |
| 水洗トイレ | ユニット工法/在来工法 | ユニット工法が主流、在来工法もある |
| 簡易水洗トイレ | 在来工法 | 給排水工事が比較的しやすい |
| ポンプ式トイレ | ユニット工法 | おもにユニット型 |
| 非水洗トイレ | 在来工法 | 簡易設置可能で工事不要のタイプが多い |
| 災害レジリエンストイレ | ユニット工法 | おもに組み立て式ユニット型 |
| 携帯トイレや簡易トイレ | 非工法(携帯型) | 組み立てや携帯できる簡易タイプで工事不要 |
| マンホールトイレ | 在来工法 | 下水道マンホールに接続し工事が必要 |
| 仮設トイレ | ユニット工法/在来工法 | ユニット工法が中心だが在来工法の場合あり |
ただし、採用される工法は製品やメーカーによって異なり、すべてのトイレの種類と工法の組み合わせで当てはまるわけではありません。
施設の立地や工期、デザイン要件に応じて選ぶのがポイントです。
複数メーカーが製品を展開しているため、納期や保証体制、カスタマイズ性で比較検討するとよいでしょう。
おしゃれなデザインや機能性で選ぶ
近年の屋外トイレは、シンプルで洗練されたデザインが主流です。
デザイン面は、以下の点を踏まえて選びましょう。
- 建物や周辺施設との調和
- 色合い・素材
- ロゴデザイン
利用者のニーズに合わせて、以下の機能が備わっているかも確認することが重要です。
- 高齢者・車いす利用者への対応(手すり、段差解消)
- 子ども連れ対応(おむつ交換台、ベビーチェア)
- 女性利用を想定した配慮(照明、清潔感)
- 障がい者対応(広い有効面積、優先利用の表示)
利用者層を想定し、すべての人が安心して使える環境を設計すると施設全体の満足度向上につながります。
屋外トイレの設置費用
屋外トイレの設置費用は、洗浄方式や工事規模で大きく変わります。
初期費用だけでなく、5〜10年のライフサイクルコストで比較すると、より合理的に選べるでしょう。
ここから、以下それぞれの費用相場を解説します。
- 屋外トイレの一般的な設置費用
- 災害対応型トイレの費用
- 下水道・浄化槽などの条件による費用
予算や運用計画と照らし合わせ、無理のない資金計画を立てましょう。
屋外トイレの一般的な設置費用
購入する場合、トイレの洗浄方式ごとの費用目安は以下のとおりです。
| トイレの種類(洗浄方式ごと) | 合計費用目安(本体価格+工事費用) |
| 水洗トイレ | 100万~300万円(基礎+配管を含む総費用を想定) |
| 簡易水洗トイレ | 30万~300万円(用途・タンク容量・便槽・給排水条件などによって大きく変動) |
| ポンプ式トイレ | 30万〜100万円(概算レンジ。条件によっては超える可能性あり) |
| 非水洗トイレ | 30万円前後(設置を含めた総費用は変動が大きいため、便器本体価格を目安に提示) |
ポンプ式や非水洗トイレは水洗トイレに比べて初期投資を抑えられます。
しかし、定期的な水補給や汲み取りが必要なため、継続的にコストが発生する点に注意が必要です。
工事スケール(基礎・配管・電気など)が費用を大きく左右するため、設置前に複数業者から見積もりを取りましょう。
災害対応型トイレの費用
災害対応機能を備えたトイレの費用は、自治体や施設の規模、機能仕様、設置環境により変わります。
以下の費用を、目安として参考にしましょう。
| トイレの種類(災害対応型) | 合計費用目安(本体価格+工事費用) |
| 災害レジリエンストイレ | 50万~(設計仕様に依存し、見積もりをメーカーに要請する必要あり) |
| 循環型浄化槽システム(5人槽) | 80~120万円 |
| 携帯トイレ備蓄セット(100人、1日のトイレ回数/人:5回、1セットあたり:2,000円~5,000円) | 300万~750万円(概数であり、備蓄数・使用頻度・凝固剤コスト・更新頻度などの条件によって大きく変わる) |
| マンホールトイレ |
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なお、正確な費用については、各メーカーに問い合わせが必要です。
中でも、携帯トイレ備蓄は人数・使用量による備蓄コストの変動が大きくなります。
避難生活の長期化を考慮する場合、より資金が必要です。
また、マンホールトイレシステムは下水道管に接続する大規模設備であるため、自治体により工事内容・費用が異なります。
通常利用と災害時の備えを両立できるかが、投資効率を向上させるポイントです。
参照:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」
下水道・浄化槽などの条件による費用
インフラ状況によっても、必要な工事や維持費は変わります。
| 区域 | 推奨トイレタイプ | おもな特徴 | メンテナンス |
| 下水道整備区域 | 接続型水洗トイレが基本 | 配管工事費を相場に含む | 通常の水洗トイレと同様 |
| 下水道未整備区域 | 浄化槽接続型がおすすめ | 浄化槽の購入・設置費用が必要 | 年1回点検、3年ごと清掃 |
| インフラ整備が困難な山間部 | 自己完結型システム(循環型トイレなど) | 初期投資は高い | メンテナンス費用を抑えられる |
長期ランニングコストを試算し、正確なコストを見積もることが大切です。
利用シーンに応じた屋外トイレの種類
施設の用途や利用者層によって、適したトイレタイプは変わります。
普段から利用する場合の快適性と、災害時の機能性を両立させることがポイントです。
- 公園・学校
- 工事現場・イベント
- 防災拠点・避難所
それぞれのシーンに応じた選ぶ基準を理解して、利用者満足度と安全性を両立させましょう。
公園・学校
公園や学校は多くの人が利用するため、衛生性と快適性をもつ「水洗型」または「ユニット型水洗トイレ」が推奨されます。
メリットは、以下のとおりです。
- 景観に調和するデザイン
- 定期清掃・メンテナンスがしやすい
- バリアフリー対応(手すり・広い有効面積)
利用シーンに合わせて、複数タイプの併設を検討してみるのもよいでしょう。
メイン施設には水洗型、屋外にはユニット型水洗トイレを配置すると、利便性が高まります。
参照:国土交通省「~建設現場の環境をより快適に~「快適トイレ」の事例集ver.1」
工事現場・イベント
工事現場やイベントでは、短期間の使用や移設を考慮し「ポンプ式」または「ユニット型ポンプ式トイレ」がおすすめです。
設置工事が少ないため、全体コストが削減できます。
イベント会場ではリース・レンタルを視野に入れて検討するのもおすすめです。
繁忙期と閑散期で利用者数が大きく変動する場所のため、需要に応じた柔軟な対応が可能です。
防災対応を加味する場合、携帯トイレの常備やポンプ式を複数台配置する方法もあります。
いくつかの手法を重ね合わせた体制づくりも検討しましょう。
防災拠点・避難所
防災拠点や避難所では、さまざまな方式を組み合わせると災害時でも安心して利用できます。
- 個室や照明付きのトイレ
- 少量の水で稼働するトイレ
- 汲み取り不要の自己処理型トイレ
防災公園のように、平時は公園機能として日常利用できると、防災対応と日常利便性を両立させられます。
循環型浄化槽システムは、断水・停電時でも水洗機能を継続でき、長期の避難生活に耐える性能が特徴です。
土壌微生物膜技術で処理された水は透明でほぼ臭いもなく、被災者が安心してトイレを利用できます。
また、上下水道に頼らず排泄物をその場で処理する自己完結型トイレも、防災用途として注目されています。
防災公園とは?防災トイレ・かまどベンチなど設備と導入事例を解説
屋外トイレ導入の設注意点
屋外トイレの種類を検討するときは、運用全体を見据えた計画が施設満足度とコスト効率を左右します。
ポイントは以下の3つです。
- 設置前に周辺環境をチェックする
- 利用者の声を運用に反映する
- 災害時の対応マニュアルを準備する
事前にポイントを押さえておくことで、導入後の運用もスムーズになります。
設置前に周辺環境をチェックする
屋外トイレ設置前には、以下のポイントを確認しましょう。
- 地盤調査や搬入経路の確保
- 水道・下水道・電気などインフラ状況
- 大型車両・クレーン搬入の可否(狭小地の場合)
中でも高齢者が多い施設では、手すりの位置や太さや段差の有無、バリアフリー対応の確認は必須です。
まずは現地調査を行い、安全性と快適さが保てる屋外トイレを設置しましょう。
利用者の声を運用に反映する
施設の利用者層を把握し、トイレ設計に反映させることが大切です。とくに高齢者や子ども連れ、女性、障がいのある方は配慮が必要になります。
必要な設備と配慮のポイントは、以下のとおりです。
| 利用者層 | 必要設備・配慮ポイント |
| 高齢者 | 手すり、段差解消、十分な面積 |
| 子ども連れ | おむつ交換台、ベビーチェア、子どもサイズの便座 |
| 障がい者 | 車いす対応、広い有効面積、優先利用の標示 |
| 女性 | 清潔感、照明、防犯対策、更衣スペース |
すべての利用者が安心して利用できるように工夫することがポイントです。
施設利用者からの意見を収集し、運用面での改善を心がけるとよいでしょう。
災害時の対応マニュアルを準備する
屋外トイレの種類を検討する際、災害時の利用を見越した運用ルールも事前に決めましょう。
災害時マニュアルを整備すると、万が一の事態の混乱防止につながります。
検討項目は以下のとおりです。
- トイレ利用の優先順位付け
- 携帯トイレなどの備蓄数計算
- 従業員向け使用方法研修
- 災害時協定業者との契約
- 定期的な防災訓練計画
通常時の利便性と災害時対応を両立させることで、施設の社会的責任を果たせます。
まとめ:屋外トイレの種類を理解した施設づくりを
屋外トイレは「普段使うときの快適性」と「災害時にも対応可能な機能性」の2つのポイントが重要です。
防災投資としての視点も加えることで、最適なトイレを選べます。
初期費用だけでなく、5〜10年のライフサイクルコストで検討しましょう。
H.O.C株式会社では、公園、学校、防災施設など多様な用途に対応した高機能な屋外トイレを取り揃えています。
デザイン性と実用性を兼ね備えた製品ラインアップから、通常時・災害時双方を見据えた最適なソリューションをご提案します。
施設のニーズ、予算、防災対応を含めた屋外トイレの選定など、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
西岡 良祐
H.O.C株式会社 福岡営業本部 主任
